石田憲

人物・経歴

政治学者である石田憲（いしだ けん）氏は、1959年7月20日に東京都に生まれました。日本の政治学・学術界に大きな足跡を残した家系に連なる人物です。父は著名な政治学者である石田雄氏（東京大学名誉教授）であり、兄も政治学者の石田浩氏（東京大学名誉教授）です。さらに、祖父にあたる石田馨氏は神奈川県知事や警視総監を、曾祖父の大塚貢氏は茨城県知事を務めました。また、伯父（父の姉の夫）にあたる鈴木俊一氏は東京都知事として長期にわたり都政を担うなど、政界や学術界の中枢に深く関わってきた家系の出身です。

石田氏は国際基督教大学教養学部を1983年に卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科に進み、1985年に修士課程を修了しました。その後も研究を続け、1992年には「ファシズム期イタリア対外政策の黄昏: 1935-1939地中海をめぐるイタリアの対英政策を中心として」と題した論文で、東京大学より博士（法学）の学位を取得しています。

研究者としてのキャリアは、1993年に大阪市立大学法学部助教授として始まりました。1997年には千葉大学法経学部助教授に転じ、2000年からは同大学の教授を務めています。現在、千葉大学大学院社会科学研究院にて国際政治講座を担当し、教育・研究活動を行っています。

学術研究活動に加え、現代日本の政治や社会にも関心を持ち、2014年からは「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人の一人としても活動しています。

研究業績

石田氏の専門は国際政治史、特に第二次世界大戦を巡る日独伊の関係史や、それぞれの国の政治・社会の比較研究に重点を置いています。ファシズム期のイタリア政治・外交史に関する研究は氏の研究の核の一つであり、博士論文を基にした著作『地中海新ローマ帝国への道』では、1930年代後半のイタリアの対外政策、特に地中海地域における動向とイギリスとの関係を詳細に分析しています。

比較政治史の視点からは、敗戦後の日本とイタリアにおける憲法制定過程を多角的に考察しており、『敗戦から憲法へ――日独伊憲法制定の比較政治史』や『戦後憲法を作った人々――日本とイタリアにおけるラディカルな民主主義』といった著作で、両国がどのように新しい国家体制を築き、その過程でどのような議論や社会運動があったのかを深く掘り下げています。

また、第二次世界大戦に至る国際関係、特に日独伊三国同盟の形成過程についても重要な研究成果を発表しています。著作『日独伊三国同盟の起源』では、イタリアや日本それぞれの国内事情や外交判断、あるいは枢軸各国の思惑の違いなどがどのように同盟締結に影響したのかを、史料に基づき分析しています。個別の歴史的事象にも焦点を当てており、『ファシストの戦争』では、第二次エチオピア戦争を単なるイタリアの侵略としてだけでなく、当時の世界情勢や思想、社会構造との関連で立体的に捉え直しています。

最新の著作である『戦争を越える民主主義－日本・イタリアにおける運動と熟議のデモクラシー－』では、現代の日本とイタリアにおけるデモクラシーのあり方について、歴史的な視座も踏まえて論じています。

石田氏の研究は、単著のみならず、多くの共著や学術論文、学会発表においても展開されています。ファシズム論、戦争犯罪、植民地主義の比較、文化外交、あるいは丸山眞男やレンツォ・デ・フェリーチェといった著名な思想家の比較研究など、多岐にわたるテーマを国際比較、特に日伊比較の視点から論じています。英語やイタリア語での著作や論文も発表しており、国際的な学術交流にも積極的に参加しています。

その研究は、過去の歴史を丹念に検証しつつ、現代の政治や社会が抱える課題、例えばデモクラシーや人権、国際関係のあり方を考える上でも重要な示唆を与えています。

関連項目

イタリア
ファシズム
エチオピア戦争
日独伊三国同盟
国際政治
立憲デモクラシーの会

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