石神井用水

石神井用水は、かつて東京都北区の王子付近から隅田川へと流れていた用水路です。石神井川の水を王子神社と飛鳥山の間に設けられた王子石堰で堰き止め、東へと流していました。別名として王子川、または音無川とも呼ばれていました。

流路

石神井用水は、現在のJR線に沿うように流れ、王子から田端、西日暮里、日暮里へと続いていました。日暮里駅前からは、荒川区と台東区の境界を形成しながら南東方向に流れ、三ノ輪付近で複数の流れに分かれます。

北東方向：石浜川として流れ、隅田川へと注ぎます。
南東方向：思川として明治通りに沿って流れ、泪橋を抜け、白鬚橋付近で隅田川に合流します。
その他：日本堤沿いに山谷堀へと繋がっていました。

歴史

明治時代には、正式名称として「下郷用水」と呼ばれていました。これは、北側に分水される根村用水・上郷用水に対して区別するための名称です。下郷18カ村によって石神井川下用水組合が結成され、農業用水として管理されていましたが、宅地化が進むにつれて昭和初期までに管理組合は廃止されました。

江戸時代には蛍が飛び交うほどの清流でしたが、次第に水質が悪化し、現在は全区間が暗渠化され、下水道として利用されています。

現在

音無川という名前は、日暮里駅前の消防署「荒川消防署 音無川出張所」にその名残を留めています。

関連文献

江戸時代の地誌である『江戸名所図会』には、音無川に関する記述があり、当時の様子を垣間見ることができます。

斎藤長秋 編「卷之五 玉衡之部 音無川」『江戸名所図会』 3巻、有朋堂書店〈有朋堂文庫〉、1927年、319頁。NDLJP:1174157/164。

石神井用水は、かつての江戸の風景を語る上で重要な存在でしたが、都市化の波とともにその姿を消しました。しかし、その名前や痕跡は今もなお、人々の記憶や地名、そして文献の中に残っています。

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