石鎚芸術村チロルの森

石鎚芸術村チロルの森：幻の芸術村

石鎚芸術村チロルの森は、1996年7月20日に愛媛県西条市に開園した農業公園型テーマパークでした。株式会社ファームが運営し、単なる営利施設ではなく、芸術家たちが生活しながら創作活動を行う「芸術村」としての側面を持っていました。石鎚山系の豊かな自然を背景に、オーストリアのチロル地方をイメージした景観が特徴でした。

施設の概要

園内には、レストラン、地ビール工場、パン工房などが設けられ、特に地ビール「清流ビール」は、加茂川の伏流水を使用し、ドイツから直輸入した設備で製造されていました。当初は「ピルスナー」と「ミュンヘン」の2種類でしたが、後に上面発酵ビールも加わり、3種類のビールが楽しまれていました。

入場は無料で、バーベキューや地ビール、ソーセージ、パンなどの販売が主な収入源でしたが、後に施設利用券付きの入場料を徴収するシステムに変更されました。最盛期には年間30万人の来場者を見込んでいましたが、2004年の台風被害や経営状況の変化により、2009年12月1日に休園、そのまま閉鎖となりました。

開設後の試行錯誤

開園当初は入場料無料でしたが、園内での購入がない来園者が多かったため、入場料を徴収し、同額の施設利用券を交付する方式に変更されました。1996年には水野晴郎を招いて野外映画祭を開催、1997年と1998年には「いしづち映画祭」として巨大バルーンスクリーンでの無料映画上映も行われました。しかし、2004年の台風被害により営業時間の短縮を余儀なくされ、2009年に閉園しました。

閉鎖後の跡地利用

閉鎖後、2016年に松山市のオオノ開発が跡地を取得し、温泉施設としての再開発を計画しました。ボーリング調査も行われましたが、2019年夏までに全ての建物が撤去され、2025年現在、目立った動きはありません。現在残っているのは、植栽された樹木と国道沿いの看板のみとなっています。

特記事項

1998年には、四国各地の地ビール製造業者らによる「四国地ビール協議会」が発足し、「石鎚芸術村チロルの森」の清流ビールも参加しました。これは、地域振興と地ビール文化の発展を目指した取り組みでした。

まとめ

石鎚芸術村チロルの森は、芸術と自然が融合したユニークなテーマパークとして、地域活性化のモデルとなる可能性を秘めていました。しかし、経営上の課題や自然災害の影響を受け、短期間で閉園という結果になりました。その跡地は、現在も再開発の計画が進んでいませんが、かつて存在した「芸術村」の記憶は、今も人々の心に残っています。

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