石黒昇

石黒 昇の生涯と業績

石黒昇（いしぐろ のぼる、1938年8月24日 - 2012年3月20日）は、東京都で生まれた日本のアニメ監督、演出家、アニメーターである。彼はアニメ制作会社アートランドの創設者であり、晩年には新たに設立されたアートランドの取締役会長を務めていた。さらに、代々木アニメーション学院では講師としても活動していた。

幼少期と漫画家への道のり

石黒は小学生のころ、手塚治虫の『新宝島』の影響で漫画を描き始め、高校3年生で貸本漫画家としてデビューした。その後、一時は漫画の道を諦め、音楽バンドを結成するも、アニメーターとしての道を選ぶこととなる。1957年、日本大学芸術学部映画学科に入学し、仲間とともに8mmフィルムでの自主制作に励む。そして、1964年に大学を卒業し、アニメーティングの世界へ足を踏み入れる。

アニメ界でのキャリアのスタート

石黒は、フジテレビの子会社にあたるアニメ制作会社テレビ動画に入社し、早くから原画を任されるようになる。『がんばれ!マリンキッド』では初めて絵コンテを手掛け、その後も虫プロ制作の「鉄腕アトム」など、多くの名作に関与していく。しかし、大西プロを離れた後は、仲間たちと共に新たなスタジオを立ち上げるも短期間で解散を経験し、フリーの演出家としての活動が始まる。

重要な作品とアートランドの設立

1974年に放送された『宇宙戦艦ヤマト』ではアニメーションディレクターとして松本零士を補佐し全話の演出を担当。この作品は大ヒットし、後のSFアニメに多大な影響を与えることとなる。1978年には有限会社アートランドを設立し、『超時空要塞マクロス』や『メガゾーン23』といった大ヒット作を次々と生み出した。

アートランドでは、若い才能を積極的に起用し、彼らに大きな役割を与えることで、アニメ業界に新たな血を入れることになった。特に『マクロス』では、当時のアニメ界で名を馳せることとなる多くのアニメーターが参加し、プロジェクトを成功に導いた。

音楽に対する造詣とアートランドの成長

石黒は音楽、特にクラシック音楽に対して深い理解を持っていた。彼の手がけた作品では、音楽のバックグラウンドが強く反映されており、特に『銀河英雄伝説』では音楽にクラシックを取り入れてより深い演出を実現した。しかし、アートランドはテレビアニメがキャラクター重視に移行する中で、その流れに対する葛藤もあった。

最晩年と遺産

2005年にはアートランドが『蟲師』の制作を受け持ち、久しぶりに情熱を取り戻す場面もあったが、2012年3月に神奈川県で逝去。彼の73年の人生は、多くのアニメ作品に影響を与え続けている。

石黒昇は、監督としてだけでなくアートランドの経営者としても成功を収め、アニメ業界の発展に尽力した。彼の残した作品群は、今もなお多くのファンに愛され続けている。

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