砂漠の盾作戦

砂漠の盾作戦：湾岸戦争への序章

1990年8月、イラクによるクウェート侵攻という衝撃的な出来事をきっかけに、国際社会は緊迫した状況に陥りました。国連安全保障理事会はイラクの即時撤退を求める決議660を採択し、アメリカ合衆国はサウジアラビアとその周辺諸国の防衛支援に乗り出します。この防衛作戦が後に「砂漠の盾作戦（Operation Desert Shield）」として知られることになるのです。

作戦の発端と目的

イラク軍のクウェート侵攻は、世界に衝撃を与え、国際的な危機を引き起こしました。アメリカは、サウジアラビアを含む湾岸諸国の安全保障を確保し、イラクの侵略行為を阻止するために、大規模な軍事介入を決断したのです。砂漠の盾作戦の主要な目的は、イラク軍による更なる侵略を防ぎ、クウェートの解放のための軍事力を結集することにありました。この作戦は、湾岸戦争勃発前の、緊張感漂う準備段階にあたる重要な軍事行動だったと言えるでしょう。

多国籍軍の編成と作戦準備

アメリカ合衆国は、単独行動ではなく、国際的な協調の下でこの作戦を進めることを選択しました。そのため、アメリカを中心とした多国籍軍が編成されました。多様な国籍の兵士が一つとなり、作戦に参加したのです。作戦には約50万人の兵士が参加し、その規模は歴史的なものとなりました。バーレーンに設置された司令部を中心に、綿密な作戦計画が立案され、実行に移されていきました。

作戦開始当初、アメリカ軍はイラク軍に対し、十分な効果を上げることができませんでした。そこで、国連安保理決議第665号に基づき、陸海空からの軍事支援が強化され、本格的な軍事対抗が始まりました。アメリカが有志国から軍隊の派遣を募ったのは、政治的な理由によるものでした。多国籍軍の編成は、アメリカ単独では実現が困難だったのです。

作戦の推移とイラクの対応

クウェート侵攻直後から、アメリカ軍は具体的な空爆作戦を立案しました。イラクの大量破壊兵器関連施設の無力化、クウェートにおけるイラク軍の防空能力の破壊、イラク軍全体の無力化、そしてクウェートからのイラク軍の完全撤退などが、作戦目標に含まれていました。

侵攻からわずか7日以内には、アメリカと同盟国の軍用機がサウジアラビアに配備され、防備態勢を強化しました。イギリスやフランスなどの地上軍も続々と到着し、作戦準備は着々と進められました。アメリカは民間予備航空隊を初めて動員し、民間の航空会社から多数の輸送機を借り上げ、人員や物資の輸送に活用しました。空輸による物資輸送は全体のわずか5％に留まり、残りは海路による輸送が中心となりました。

イラクのフセイン大統領は、当初アメリカ軍の空軍力を過小評価していました。しかし、アメリカ軍は統合化された指揮統制による機動的な攻撃概念を採用し、最新の装備とシステムで４軍を支援しました。イラク軍は、量的には相当な軍事配備を誇っていましたが、空軍の能力は限定的でした。結果的に、多国籍軍はイラク軍を量的にも質的にも大きく上回ることになりました。

1991年に入ると、イラクは危機的な状況に陥ります。アメリカ議会はイラク攻撃を容認し、国連によるクウェート撤退期限が過ぎてもイラク軍は撤退しませんでした。多国籍軍は9か国から派遣された装備を臨時体制で運用し、空爆作戦を開始しました。F-117、F-15E、F-111など、夜間爆撃が可能な最新の戦闘機が投入され、イラク国境周辺では攻撃ヘリコプターがパトロール飛行を行いました。

砂漠の盾作戦の意義

砂漠の盾作戦は、湾岸戦争の始まりを告げる重要な軍事行動でした。この作戦によって、多国籍軍はサウジアラビアと湾岸諸国へのイラクの侵略を阻止し、その後の湾岸戦争における勝利へと繋がる重要な足掛かりを作ったのです。この作戦は、冷戦後の世界における国際協調の重要性と、軍事力の巧みな運用を改めて示す事例となりました。また、この作戦は、将来の軍事作戦における多国籍軍の作戦モデルとして重要な役割を果たすことになったのです。

参考文献

『スミソニアン 現代の航空戦』原書房 ロン・ノルディーン著

関連項目

湾岸戦争
多国籍軍
ウィリアム・マクレイヴン

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