民間予備航空隊

民間予備航空隊 (CRAF) とは

民間予備航空隊 (Civil Reserve Air Fleet, CRAF) は、アメリカ合衆国が有事の際に空輸能力を確保するために設けた予備軍事制度です。平時には民間航空会社が運用する機材を、緊急時には軍の指揮下で兵員や物資の輸送に活用します。

CRAF創設の背景

CRAFの制度は、1948年から1949年のベルリン封鎖における航空輸送の成功がきっかけとなり、1952年に創設されました。ベルリン封鎖において、航空輸送が戦略的かつ継続的な補給能力を持つことが証明され、その重要性が認識されたのです。

CRAFの仕組み

アメリカの主要な航空会社はCRAFに組み込まれており、有事の際には、人員や機材が空輸兵力として軍の指揮下で運用されます。通常時に必要となる大量の空輸兵力を、平時には民間で運用されている機材を活用することで、機材の維持や取得にかかる経費を削減できます。

CRAFに参加している航空会社は、平時においてフライ・アメリカ法などにより連邦政府職員の利用が見込めるほか、合衆国政府の資機材輸送を優先的に請け負うことで利益を得ています。

CRAF参加の条件

CRAFに参加するためには、アメリカ合衆国に登録された機体を保有し、1年以上の安全運航実績があり、アメリカ国防総省および連邦航空局の審査を受ける必要があります。また、旅客機の場合は保有機の30%以上、貨物機の場合は15%以上をCRAFに登録しなければなりません。

CRAFはアメリカ空軍の航空機動軍団が所管しており、半年ごとに査察が行われます。

CRAFの構成

CRAFは大きく分けて、国際部門、国内部門、傷病者航空輸送部門の3つの部門で構成されています。国際部門は長距離と短距離に分かれており、国内部門にはアラスカ部門が別途設けられています。

2007年時点では、37社、1,364機が登録されており、そのうち1,273機が国際部門に属しています。

CRAFの実働

CRAFが初めて実働したのは、1990年の湾岸危機時でした。砂漠の盾作戦において、世界各地から中東へ輸送された兵員の3分の2、空輸貨物の4分の1をCRAFが担当しました。また、イラク戦争時にも動員されています。

CRAFの動員レベル

CRAFには、3段階の動員レベルが規定されています。ステージIは限定動員、ステージIIは空輸の危機的状態、ステージIIIは国家危機状態です。これまでのところ、ステージIのみが発動されています。動員される場合、各航空会社は24時間から48時間以内に対応する必要があります。

CRAFは、アメリカの安全保障における重要な役割を担っており、今後もその重要性は増していくと考えられます。

参考情報

アメリカ空軍ファクト・ファイル
FASによる解説
* Sustaining the Civil Reserve Air Fleet (CRAF) Program

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