砂田量爾

砂田量爾（すなだ りょうじ）は、1926年5月21日に愛媛県今治市で生まれ、2015年3月23日にその生涯を閉じた日本のシナリオ作家です。特にテレビドラマの世界で多大な功績を残しました。

異色のキャリア形成

旧制松山高校を卒業後、大阪帝国大学（現・大阪大学）理学部化学科に進学しました。大学で理学を専攻した理由について、後に「一種の徴兵拒否」が目的であったと語っています。卒業後は教師の職に就きますが、一年足らずで辞して上京。その後は、欧文のタイピング、翻訳、オーディオ機器の製造販売など、実に様々な職業を経験しました。物作りが得意だったことを活かして、闇市で商品を販売するといった経験も持ち合わせていました。こうした多岐にわたる職歴は、人間や社会に対する深い洞察力を養い、後の脚本家としての活動に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

脚本家としての出発

初めて脚本を手掛けたのは、岩波映画製作の子供向け科学映画でした。これが脚本家への第一歩となります。テレビドラマの世界に本格的に進出したのは、友人からの紹介がきっかけでした。TBSの人気刑事ドラマ『七人の刑事』のスタッフに繋がりを得て、一本の脚本を執筆したところ採用され、1962年からは同番組のシナリオ陣に正式に加わりました。この『七人の刑事』への参加が、砂田量爾のキャリアにおける決定的な転機となります。

多作と評価

『七人の刑事』以降、砂田量爾はテレビドラマを中心に精力的に活動を展開し、数多くの作品を発表しました。また、演劇の台本も手掛けるなど、活躍の場は広がりました。自身のオリジナル脚本による作品としては、『風の色』『風の町』『娘たちの四季』などがあります。これらの作品では、人間関係や社会情勢を繊細かつ力強く描き出しました。

砂田の作品リストを見ると、多様な文学作品を原作とする映像化作品が非常に多いことが分かります。丹羽文雄、立原正秋、小島政二郎、三浦綾子、戸板康二、松本清張、久生十蘭、大原富枝、岡田誠三、夏樹静子、森村誠一、石沢英太郎、藤原審爾、宮本輝、永畑道子、谷崎潤一郎、笹倉明といった、錚々たる作家たちの小説や戯曲をテレビドラマとして再生させました。原作の持つ世界観を尊重しつつ、映像メディアにふさわしい表現を追求する手腕は高く評価されました。

その脚本家としての功績は、数々の受賞によっても証明されています。特に、1980年度の芸術祭では『ああ、この愛なくば』が芸術祭大賞を受賞、さらに1983年度の芸術祭でも『あふれる愛に』が芸術祭優秀賞に輝きました。これらの受賞は、砂田量爾の脚本家としてのキャリアにおける大きな節目となりました。

人物と晩年

個人的な側面としては、自身の旧制高校の後輩にあたる脚本家の早坂暁を強く意識しており、早坂の作品は必ず見るようにしていたというエピソードが残されています。多才なキャリアと深い人間理解に裏打ちされた砂田量爾の脚本は、長きにわたり多くの視聴者を魅了し続けました。日本のテレビドラマ史に確かな足跡を残した彼は、88歳でその波瀾に満ちた、そして豊かな創造性に満ちた生涯を閉じました。

主な作品

テレビドラマ

日日の背信（1967年、丹羽文雄原作）
辻が花（立原正秋原作）
君は今どこにいるの（1968年、小島政二郎原作）
羽音（1968年、三浦綾子原作）
酒場の扉（1970年、戸板康二原作）- ギャラクシー賞受賞
舞いの家（1972年、立原正秋原作）
波の塔（1973年、NHK、松本清張原作）
別れの午後（1973年）
霧の湖（1974年、NHK少年ドラマシリーズ、久生十蘭原作）
亜紀子（1975年、大原富枝原作）
定年後（1977年、NHK、岡田誠三原作）
霧氷（1977年、夏樹静子原作）
凶水系（1978年、森村誠一原作）
ガラスの家（1979年、NHK、石沢英太郎原作）
娘が家出した夏（1981年、藤原審爾原作）
道頓堀川（1982年、NHK、宮本輝原作）
大阪暮色（1984年、NHK）
恋の華 白蓮（1985年、NHK、永畑道子原作）
鍵（1995年、谷崎潤一郎原作）
遠い国からの殺人者（1995年、笹倉明原作）
娘よ（2003年、小島政二郎原作）

映画

衝動殺人　息子よ（1979年、木下恵介と共同脚本）

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