砂糖税

砂糖税：健康増進のための課税制度

砂糖税は、清涼飲料水などの砂糖含有量に応じて課税する税金、またはその仕組みを指します。別名「ソーダ税」とも呼ばれ、砂糖の過剰摂取による肥満や虫歯といった健康問題への対策として注目されています。

砂糖税導入の背景

21世紀に入り、肥満や糖尿病、虫歯といった生活習慣病の増加が世界的な問題となっています。これらの疾病リスクに砂糖の過剰摂取が大きく関わっていることから、その消費抑制が喫緊の課題となっています。

世界保健機関（WHO）は2016年、砂糖添加飲料（SSB）への20％以上の課税を提言しました。これは、砂糖添加飲料への課税が、肥満、糖尿病、虫歯の抑制に効果的であるという科学的根拠に基づいています。同年に発表されたWHOのガイドラインでは、健康維持のために、砂糖の摂取量を全カロリーの10％未満、できれば5％未満に抑えることを推奨しています。WHOが言う「砂糖」には、単糖類、二糖類、蜂蜜、シロップ、果汁、濃縮果汁などが含まれます。

砂糖税の仕組みと効果

砂糖税は、主に物品税などの間接税として導入されます。清涼飲料水の税率を引き上げることで、消費者を価格面から砂糖摂取量の削減へと促すことを目的としています。2022年の分析では、多くの国で砂糖添加飲料への課税が消費量減少に繋がっていることが示されています。

砂糖税の歴史と日本の状況

日本においては、1901年に砂糖消費税法が制定され、砂糖に課税が行われていましたが、1989年の消費税導入に伴い廃止されました。これは、砂糖が嗜好品として扱われていたためです。

各国の砂糖税導入状況

2022年時点で、45か国以上で砂糖税が導入されています。導入時期や課税額は国によって異なり、それぞれの国の事情や社会状況を反映しています。

欧州

フランスでは2011年、砂糖添加炭酸飲料に1缶あたり約1円を課税するソーダ税が導入されました。イギリスでは2018年、子供の肥満防止対策として砂糖添加飲料への課税を開始しました。

アメリカ大陸

メキシコは2014年、砂糖添加飲料に約10％の課税を導入し、ポルトガルでは2017年から同様の課税を実施しています。アメリカ合衆国では、カリフォルニア州バークレー市やペンシルベニア州フィラデルフィア市などで、住民投票や州政府の決定によってソーダ税が導入されています。

アジア

タイでは2017年から、砂糖の使用量に応じた課税が甘味料添加清涼飲料水に適用されました。インドとフィリピンでも、2017年と2018年にそれぞれ炭酸飲料と清涼飲料水に課税を開始しています。

まとめ

砂糖税は、健康増進のための重要な政策手段として、世界中で導入が進められています。その効果については、消費量の減少や健康状態の改善といった一定の成果が確認されていますが、一方で、価格上昇による低所得者への影響や、課税対象範囲の拡大など、課題も多く残されています。今後、それぞれの国や地域で、砂糖税の効果や課題を精査し、より効果的な施策が検討されていくことが重要です。

参考文献

世界保健機関 (2016年9月21日). Fiscal policies for diet and the prevention of noncommunicable diseases (Report). World Health Organization. ISBN 978-92-4-151124-7. 2021年7月27日閲覧。

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