破戒

破戒 (はかい) とは

破戒とは、聖職者、特に僧侶がその属する宗教の戒律を破ることを指す言葉です。仏教における戒律は非常に多岐にわたり、最大で350もの戒が存在すると言われています。しかし、破戒という言葉が用いられる場合、問題となるのは教団の規則である「律」よりも、個人の内面的な倫理観に関わる「戒」です。

戒と律の違い

戒: 五戒や八斎戒など、自己の内面を律する道徳的な規範。個人の倫理観や行動規範に関わる。
律: 教団の規則や規律。集団生活を円滑に進めるためのルール。

破戒は、特にこの「戒」を破る行為を指し、具体的には肉食や女犯（女性との性行為）が代表的な例として挙げられます。これらの行為は、仏教の教えに反するとされ、僧侶としての資格を問われる重大な違反行為と見なされます。

破戒を行った僧侶は、しばしば「生臭坊主（なまぐさぼうず）」と揶揄されます。これは、戒律を守らず、世俗的な欲望に染まっている様子を皮肉った表現です。

律を犯した場合

一方で、教団の規則である「律」を犯した場合、破戒とは異なる対応が取られます。律を犯した場合は、僧侶たちが集まる場所で懺悔（布薩）を行い、犯した罪の内容に応じて定められた罰を受けます。しかし、これはあくまで教団内の問題として処理され、破戒のように僧侶としての根本的な資格を失うことには繋がりません。

破戒に関する故事・ことわざ

破戒の出家は牛に生るる: 戒律を破った僧侶は、来世で牛に生まれ変わるとされる。僧侶の品行を戒める言葉。
破戒無慙（はかいむざん）: 戒律を破っても恥じないこと。転じて、約束を破っても平然としている様子を指す。

破戒は、単なる規則違反ではなく、宗教的な倫理観を根底から揺るがす行為として、重く見なされます。僧侶としての信頼を失墜させるだけでなく、仏教の教えそのものへの批判に繋がりかねないため、厳に慎むべき行為とされています。

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