女犯

女犯とは

女犯（にょぼん）とは、仏教の修行者である僧侶が戒律を破り、女性との性的関係を持つことを指します。この行為は、元々仏教の教義や戒律に基づいて禁じられており、様々な歴史的背景が存在します。

女犯の概念

仏教は、煩悩や執着を断つことを目的としており、そのためには肉食の戒律や異性との関係を絶つ必要があるとされています。戒律や菩薩戒は不浄を遠ざけ、僧侶が修行に専念できるようにするために設けられています。このため、女性との性的関係は僧侶にとって不浄であり、禁止されていました。男性や男子児童が寺院にいることは一般的でしたが、寺小姓や稚児との男色が行われることもありました。

歴史的な取り締まり

律（具足戒）によれば、僧侶は異性との接触や性的関係を一切持つことが禁じられています。このため、女犯は国の法律でも禁止され、維新までは厳重に処罰されていました。しかし、この取り締まりは時代や政治的な状況によって変動がありました。奈良時代や江戸時代には厳しく取り締まりが行われましたが、鎌倉時代や室町時代には緩和され、多くの僧侶が妻帯するケースが見られました。取り締まりの強さは当時の政治力に大きく影響を受けていたのです。

特に、日本の天台宗の最澄は、平安時代に女犯を禁じる戒律を強調しながらも、菩薩戒に基づく自由な生活を一家に許容しました。その後、鎌倉仏教の多くの宗派もこの自由な方針を受け入れ、妻帯したり俗人と変わらぬ生活を送る僧侶が増えました。

たとえば、一休宗純や親鸞は、妻帯を行っても倫理的な非難を受けることはありませんでした。親鸞は無戒を主張していたため、肉食や妻帯に関する問題はそもそも議論の余地がなかったのです。

江戸時代の処罰

江戸時代において、女犯が発覚した場合、僧侶は厳しい処罰を受けました。寺持ちの僧は遠島に送り込まれ、他の僧侶は晒されて所属する寺に預けられ、破門や追放の処分を受けることが多かったのです。たとえば、江戸市中での晒しは日本橋で行われ、数名の女犯僧が並ばされた記録も残っています。特に、他人の妻や妾と関係を持った場合、身分にかかわらず死罪や獄門の刑にされました。

ただし、浄土真宗などでは肉食妻帯が容認され、規制の対象外であったため、特に罰せられることはありませんでした。

妻帯の自由化

明治維新に伴い、国家神道政策の影響を受けて1872年に発布された太政官布告133号により、僧侶の妻帯は自由となり、僧尼令は廃止されました。この背景には、当時既に妻帯していた僧侶の存在もあったとされていますが、戒律復興運動も起こり、対立が生じました。

仏教伝来以来、国は寺院へ大きな援助を行っていましたが、布告の影響で寺院の自活運営が求められるようになりました。この結果、妻帯や兼業が必要不可欠となり、戦後は僧侶の妻帯が普通のことと認識されるようになりました。住職が子息に地位を継がせることが期待されるほか、法規の影響のもとで今も寺院運営が厳しくなっていく中で、僧侶たちは伝統と変化の狭間で生き続けています。

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