硝子の靡風

KOTOKO『硝子の靡風』（ガラスのかぜ）

日本のシンガーソングライター、KOTOKOが2005年にリリースした2枚目のオリジナルアルバムです。前作から約2年半ぶりのオリジナル作品として発表され、彼女のキャリアにおける重要な位置を占める一枚となっています。

アルバムの構成と収録楽曲

このアルバムには、発表までにリリースされたシングル曲の中から、「覚えてていいよ」のカップリング曲「DuDiDuWalalala」、「Re-sublimity」のカップリング曲「agony」および「Suppuration-core-」、さらに3枚目のシングル「地に還る 〜on the earth〜」は意図的に収録されていません。これは、アルバム全体のカラーやコンセプトを重視した選曲が行われたことを示唆しています。

パッケージは、ミュージックビデオなどが特典として付く初回限定盤と通常盤の2種類で発売されました。初回限定盤には、タイトルトラックである「硝子の靡風」のミュージックビデオとその制作過程を追ったメイキング映像が特典DVDとして同梱されており、ファンにとって魅力的な内容となっています。

商業的な成功

本作は市場においても良好な成績を収めました。オリコンのデイリーチャートでは初登場で4位にランクインし、その後発表された週間チャートでは初登場6位を記録しました。販売枚数についても、初動で33,504枚を記録し、最終的な累計セールスは47,706枚となりました。この実績は、当時のKOTOKOの人気の高さを裏付けるものです。

楽曲解説

アルバムに収録されている楽曲の中から、いくつかの特徴的な楽曲について以下に解説します。

RETRIEVE: プロデューサーである高瀬一矢氏からの明確な指示を受けて制作された楽曲です。自身の原点である故郷・札幌や、大切な仲間への思いを胸に前進していこうという強い決意が込められています。歌詞に登場する「棕櫚（しゅろ）」は、ヤシ科の植物の名前を指しています。

Wing my Way: TGLから発売されたRPG「ファーランドシンフォニー」のオープニングテーマ曲を、アルバム用にリミックスしたバージョンです。I'veのコンピレーションアルバム『Disintegration』には別バージョンが収録されています。また、2005年7月にアメリカのアナハイムで開催された「アニメエキスポ2005」ではテーマソングとして使用され、KOTOKO自身もこのイベントにゲストとして招かれ、ライブパフォーマンスを披露しました。

Meconopsis: この曲のタイトルは、「ヒマラヤの青いケシ」の別名に由来しています。神秘的で美しい響きを持つ言葉が選ばれています。

ささくれ: 自身の存在や生き方に対する内面的な不安や痛みを、身体にできる「ささくれ」に例えて繊細に歌い上げた楽曲です。この曲の終了後、間髪を入れずに次のトラック「琥珀」が始まるノンストップ構成となっています。

421 -a will-: アルバム発売後に、改めて4枚目のシングルとしてシングルカットされた楽曲です。KOTOKO本人は、この曲を「このアルバムの隠れたタイトル曲」あるいは「裏タイトル曲」と表現しており、アルバム全体を象徴する重要な楽曲と位置付けています。

硝子の靡風: アルバムのタイトルを冠した楽曲であり、テレビ番組「Anime TV」のエンディングテーマとしても使用されました。

β-粘土の惑星（ベタねんどのほし）: タイトルは独特な読み方をします。この曲は、元々2004年のライブツアー会場限定パンフレットに付属するCDに収録されていた楽曲です。広大な宇宙や地球といったスケールの中で、いかに自分自身が小さく些細な存在であるか、という視点から歌われています。

* 赤い玉、青い玉: KOTOKO本人が「お盆ソング」と称する楽曲です。「死」というテーマについて深く考え、レコーディング時には涙が止まらなくなるほど感情を込めて歌い上げたというエピソードを持つ、非常にパーソナルで感情的な一曲です。

これらの楽曲解説からもわかるように、『硝子の靡風』はKOTOKOの内面や世界観が多角的に表現された、アーティストとしての深みを感じさせるアルバムと言えるでしょう。

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