硝酸カルシウム

硝酸カルシウム：性質、製造、用途、安全対策

硝酸カルシウムは、化学式Ca(NO3)2で表されるカルシウムの硝酸塩であり、無機化合物の一種です。ノルウェーでは1913年から肥料として販売されてきた歴史を持ちます。水に非常に溶けやすく、空気中の水分を吸収して溶ける潮解性という性質を持っています。そのため、保管には密閉容器の使用が不可欠です。

製造方法

硝酸カルシウムは、主に以下の2つの方法で製造されます。

1. 水酸化カルシウムと硝酸の中和反応: 水酸化カルシウムCa(OH)2と硝酸HNO3を反応させることで生成されます。この反応は、水と硝酸カルシウムを生成する発熱反応です。


Ca(OH)2 + 2HNO3 → 2H2O + Ca(NO3)2


2. 炭酸カルシウムの希硝酸溶解: 純粋な炭酸カルシウムCaCO3を希硝酸に溶解し、濃縮することで四水和物が析出します。この方法では、二酸化炭素CO2と水が副生成物として発生します。


CaCO3 + 2HNO3 → Ca(NO3)2 + CO2 + H2O

性質と注意点

硝酸カルシウムは強力な酸化剤です。可燃物と接触すると、急激な酸化反応を引き起こし、火災や爆発の危険性があります。取り扱いには細心の注意が必要です。また、潮解性も強いため、必ず密閉容器で保管する必要があります。

硝酸カルシウムには、四水和物Ca(NO3)2・4H2Oと呼ばれる水和物も存在します。四水和物は約100℃から結晶水を失い始め、130℃で三水和物、200℃付近で無水物になります。無水物は473℃までは安定ですが、それ以上の温度で分解が始まり、600℃以上で酸化カルシウムCaOに分解します。興味深いことに、四水和物と三水和物は高温で溶解し、常温でも長期間液体状態を維持できますが、冷却すると結晶化し、常温でも安定した結晶状態になります。

自然界での生成

石灰質の土壌では、硝化バクテリアの働きによって、窒素を含む有機物が分解される過程で硝酸カルシウムが生成されます。

用途

硝酸カルシウムは、その性質から様々な用途に利用されています。

肥料: 即効性のある窒素とカルシウムを供給する肥料として広く利用されています。特に、硝酸カルシウムアンモニウム(CAN)と呼ばれる複塩肥料は、硝酸カルシウムと硝酸アンモニウム、水が結合したもので、効果的な窒素供給源となります。CANの化学式は5Ca(NO3)2・NH4NO3・10H2Oと表されます。
花火: 花火の火薬の酸化剤として使用され、鮮やかな発色に貢献しています。

安全性

硝酸カルシウムは強力な酸化剤であるため、可燃物との接触は厳禁です。また、吸入や皮膚への接触も避けなければなりません。取り扱いには、適切な保護具を着用し、換気の良い場所で作業することが重要です。誤って摂取した場合には、すぐに医師の診察を受けてください。

まとめ

硝酸カルシウムは、その強力な酸化性と水への溶解性、潮解性といった性質を持つ重要な化合物です。肥料や花火といった幅広い用途を持つ一方で、安全な取り扱いには細心の注意が必要です。その性質を理解し、適切な取り扱いを行うことで、硝酸カルシウムを安全かつ効果的に利用することができます。

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