硫酸セシウム

硫酸セシウム：性質、製法、用途

硫酸セシウムは、化学式Cs₂SO₄で表されるセシウムの硫酸塩です。無色の結晶として存在し、水への溶解度が高く、エタノール、アセトン、ジエチルエーテルなどにはほとんど溶けません。他のアルカリ金属の硫酸塩と比較すると、水に対する溶解度は硫酸カリウムや硫酸ルビジウムよりも高いという特徴があります。

製法

硫酸セシウムは主に2つの方法で合成されます。

1. 炭酸[セシウム]]と希硫酸の反応: 炭酸セシウム]を希[硫酸]に溶解させ、溶液を濃縮することで、[[硫酸セシウムの結晶が析出します。この反応は、以下の化学式で表されます。


Cs₂CO₃ + H₂SO₄ → Cs₂SO₄ + CO₂ + H₂O


この反応では、炭酸セシウムと硫酸が反応して、硫酸セシウム、二酸化炭素、水が生じます。二酸化炭素は気体として放出されます。

2. 塩化[セシウム]]と硫酸の反応: 塩化セシウム]に[硫酸を加え、加熱して蒸発乾固させることで、塩化水素]を追い出し、[[硫酸セシウムを得ることができます。この反応は、以下の化学式で表されます。


2CsCl + H₂SO₄ → Cs₂SO₄ + 2HCl


この方法では、塩化セシウムと硫酸が反応して硫酸セシウムと塩化水素が生成します。塩化水素は揮発性が高いため、加熱によって除去されます。

物理的性質

室温では斜方晶系の結晶構造を持ち、その格子定数はa=6.24Å、b=10.92Å、c=8.22Åです。単位格子中には8個のセシウムイオンと4個の硫酸イオンが含まれています。600℃以上に加熱すると、六方晶系に相転移します。

化学的性質

[硫酸]]セシウムは、アルミニウム]、[ガリウム]、[マンガン]などの3価の金属イオンと反応して、[[複塩（明礬）CsM(SO₄)₂・12H₂Oを形成します。これは、硫酸セシウムが他の金属イオンと錯体を形成する性質を示しています。

用途

硫酸セシウムの最も重要な用途の1つは、その高い密度を利用した物質分離です。硫酸セシウムの濃厚溶液は、平衡密度勾配遠心法による物質の分離に用いられる重液として広く利用されています。例えば、DNAやタンパク質などの生体高分子の分離精製に用いられています。25℃における硫酸セシウム水溶液の密度は、10%溶液でd = 1.0856、20%溶液でd = 1.1897です。この高い密度が、密度勾配遠心法における分離効率に大きく貢献しています。

まとめ

硫酸セシウムは、その高い水への溶解度と密度、そして様々な金属イオンとの反応性から、化学研究や工業プロセスにおいて重要な役割を果たす化合物です。特に、生体高分子の分離精製における利用は、現代の生物学研究に不可欠な技術となっています。

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