ジエチルエーテル

ジエチルエーテルとは？

ジエチルエーテル（diethyl ether）は、2つのエチル基がエーテル結合を持つ有機化合物です。密度は0.708 g/cm³で、甘い香りが特徴的な無色透明の液体であり、一般的に「エーテル」と呼ばれる際にはこの物質のことを指します。別名エチルエーテルとも言われています。ジエチルエーテルは主に溶媒や燃料として広く利用されているほか、過去には吸入麻酔としても使われていました。

利用用途

有機溶媒

ジエチルエーテルは、有機溶媒として非常に人気があります。水にはやや溶解しやすく、オクタノール/水分配係数は0.89です。水より密度が低いため、有機層は水層の上に浮かぶ状態になります。この特性から、ジエチルエーテルは溶媒抽出法や、グリニャール反応などでの有機金属化学の溶剤として使用されています。また、アセチルセルロースなどの合成にも用いられています。

麻酔薬

かつてジエチルエーテルは、クロロホルムに代わる吸入麻酔薬として医療現場で使用されていました。特徴として、導入時間が長く、筋弛緩効果が強い一方で、呼吸器や循環系への影響が比較的軽微です。使用時は7 - 10 %の濃度で酸素欠乏に陥りにくいとされています。しかし、引火性が高く、静電気がためやすいため、現代の手術室では使われづらくなっています。途上国では依然として使用されていますが、新興国では関連する事故も多発しています。

燃料

ジエチルエーテルは低い発火点（160 ℃）と高いセタン価（85 - 96）を持つため、ディーゼルエンジンの燃焼助剤として使用されています。

飲用

19世紀から20世紀初頭にかけて、一部地域でエタノールの代用品として飲まれることがありました。摂取経験はエタノールと似ており、初めは気分が高揚し、やがて酩酊します。しかし、実際にはエタノールよりも数倍の毒性があり、過剰摂取は非常に危険です。特にポーランドなどでは、温めて飲まれることが一般的でしたが、危険な飲用スタイルも広まっていました。

合成

ジエチルエーテルの合成は、エタノールを脱水して得ることができます。酸を触媒とし、エタノールの脱水縮合によって生成されます。この反応は可逆的であり、エーテルの収率を向上させるためには反応系からエーテルを取り除く必要があります。

代謝と危険性

ジエチルエーテルは、体内でシトクロムP450酵素によって代謝され、エタノールとアセトアルデヒドを生成します。また、アルコール脱水素酵素を阻害するため、エタノールの代謝が遅れ、残留効果が強く出ることがあります。引火性も極めて高く、取り扱いには注意が必要です。

法規制

ジエチルエーテルは、国際的に規制されています。特に日本では、危険物として取り扱われ、有機溶剤中毒予防規則に関連する法律のもとで管理されています。このように、ジエチルエーテルは多様な用途と特性を持ちながらも、安全に使用するためには注意が求められます。

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