硫黄島通信所

硫黄島通信所は、東京都小笠原村硫黄島にあるアメリカ海軍の訓練施設です。この施設は、横須賀を事実上の母港とする航空母艦艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)の場として利用されています。もともとは通信施設でしたが、現在はその役割を終え、訓練施設として重要な役割を担っています。

基地概要

硫黄島通信所の概要は以下の通りです。

施設面積: 6,630,688 m2（うち私有地2,360,430 m2、市町村有地57,408 m2、国有地4,212,851 m2）
施設番号: FAC3181
管理部隊: アメリカ海軍厚木航空施設隊
使用部隊: アメリカ海軍第5空母航空団
共同使用者: 自衛隊、独立行政法人防災科学技術研究所

この施設は、広大な面積を有し、複数の組織によって共同使用されています。アメリカ海軍が主体となって管理・使用していますが、自衛隊や防災科学技術研究所も共同で利用しています。

施設の概要

硫黄島通信所は、その名称にもかかわらず、実際には訓練施設として使用されています。以前は通信所として機能していましたが、現在は運用が停止しており、その施設自体は遊休地となっています。厚木飛行場で行われていた夜間離着陸訓練が、周辺住民の反対運動により実施が困難になったため、代替地として硫黄島が選ばれました。

この際、海上自衛隊が運営し、航空自衛隊も訓練基地として使用していた硫黄島航空基地を、日米共用飛行場として登録するのではなく、在日アメリカ海軍施設である「硫黄島通信所」を訓練施設として登録変更するという形がとられました。そのため、実質的には硫黄島通信所はアメリカ海軍の硫黄島飛行場施設そのものとなっています。

沿革

硫黄島通信所の沿革は以下の通りです。

1968年（昭和43年）6月26日: 小笠原諸島の日本復帰に伴い、既存施設が提供されました。
1985年（昭和60年）11月18日: 水陸両用訓練水域（約74 km2）が追加提供されました。
1989年（平成元年）1月18日: NLPの暫定施設として硫黄島を使用することが日米間で基本合意されました。
1991年（平成3年）6月25日: 航空機の飛行支援施設等用地として、国有地約646,100 m2、民公有地約300,100 m2が追加提供されることが閣議決定されました。
1992年（平成4年）10月30日: 訓練宿泊施設が追加提供されました。
1993年（平成5年）4月23日: 訓練宿泊施設が再度追加提供されました。
1993年（平成5年）10月: ロラン局としてのアメリカ沿岸警備隊極東支部の使用が終了しました。
1994年（平成6年）10月: 海上保安庁による航空の安全確保業務が終了しました。
1996年（平成8年）7月26日: 貯油施設等用地として、国有地約3,300 m2、民公有地約1,200 m2が追加提供されることが閣議決定されました。
1998年（平成10年）2月3日: 宿舎施設等用地として、国有地約370 m2が追加提供されることが閣議決定されました。
1999年（平成11年）3月23日: 宿舎として、建物約630 m2が追加提供されることが閣議決定されました。
2002年（平成14年）2月4日: NLPは引き続き、できる限り硫黄島で実施することが日米政府間で合意されました。
2004年（平成16年）12月7日: 戦没者の碑（天山）区域の拡張整備用地として、民有地約7,800 m2を厚生労働省と共同使用することが閣議決定されました。
2005年（平成17年）2月4日: 非常用電源室として、建物約450 m2が追加提供されることが閣議決定されました。
2007年（平成19年）10月30日: 下水道施設として、民有地約230 m2が追加提供されることが閣議決定されました。

これらの経緯から、硫黄島通信所が段階的に拡張され、訓練施設としての機能を強化してきたことがわかります。

NLP使用の経緯

夜間離着陸訓練（NLP）が硫黄島で行われるようになった背景には、騒音問題と代替地の選定という複雑な経緯があります。

1983年（昭和58年）: 厚木基地で空母艦載機による夜間離着陸訓練が開始され、騒音問題が深刻化しました。
1983年（昭和58年）12月: 三宅島村議会は、三宅島空港のジェット化を促進するための官民共用空港の誘致を求める意見書を採択しました。背景には、同年10月の三宅島噴火による災害復旧資金の獲得がありました。政府は三宅島を厚木基地に代わるNLPの最有力候補地としました。
1984年（昭和59年）9月: 村議会議員のリコール選挙が行われ、議会では基地反対派が多数を占め、島民の過半数も反対派となりました。
1988年（昭和63年）8月: 三宅島への移転が島民の反発により進展しない中、当時の瓦力防衛庁長官が、厚木基地はNLPの場所として不適切であるとし、硫黄島への移転を提唱しました。
1989年（平成元年）1月: 硫黄島がNLPの暫定地として発表されました。米軍は、日本が訓練施設の整備を行うことを条件に、硫黄島でのNLP実施に同意しました。
1989年（平成元年）12月: 硫黄島での工事が開始されました。
1991年（平成3年）6月18日: 日米共同委員会で、既に完成した施設の提供が合意され、以後も複数回の施設提供に関する合意が行われました。
1991年（平成3年）12月: 硫黄島で初のNLPが実施されました。
1993年（平成5年）: 当初計画されていたすべての施設が完成しました。
1993年（平成5年）4月23日: 日米共同委員会での施設提供の合意により、硫黄島の諸施設が米軍に提供されることとなりました。

この一連の出来事を通して、硫黄島通信所がNLPの重要な拠点となった背景が理解できます。

脚注

硫黄島通信所は、実質的にアメリカ海軍の硫黄島飛行場施設として機能しています。

関連項目

 アメリカ軍
* 在日米軍

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