碁聖

碁聖（ごせい）

碁聖とは、囲碁界において特に優れた棋士に対して贈られる敬称であり、将棋界における「棋聖」に相当する称号です。また、囲碁の棋戦の一つである碁聖戦で優勝した棋士にも、このタイトルが与えられます。

碁聖と呼ばれた人々

歴史の中で「碁聖」と称えられた人物は数多く存在します。

寛蓮: 平安時代の棋士で、橘良利という俗名を持ちます。宇多天皇に仕えた僧侶であり、醍醐天皇の前で藤原清貫と天覧対局を行ったことで知られています。その実力から「碁聖大徳」とも呼ばれ、最も初期に碁聖の名で呼ばれた人物とされています。
本因坊道策: 江戸時代前期の棋士。本因坊丈和と比較して「前聖」とも呼ばれました。
本因坊道知: 江戸時代中期の棋士。囲碁の名人であるだけでなく、将棋も非常に強く（七段並み）、中将棋においても卓越した才能を発揮したため、「盤上の聖」と称されました。
本因坊丈和: 江戸時代後期の棋士。本因坊道策と比較して「後聖」とも呼ばれました。
本因坊秀策: 江戸時代後期の棋士。明治時代以降、「秀策ハ聖棋神手」「先師碁聖秀策」と評されるようになり、碁聖として広く認知されるようになりました。
呉清源: 昭和時代に活躍した中国出身の棋士であり、「昭和の碁聖」としてその名を轟かせました。

碁聖戦

碁聖戦は、1976年に全日本第一位決定戦が発展的に解消される形で始まりました。この棋戦は、新聞囲碁連盟、日本棋院、関西棋院が主催しています。第1期では、当時の全日本第一位タイトル保持者であった大竹英雄と、挑戦権を獲得した加藤正夫の間で、決勝五番勝負が行われました。

初期の碁聖戦（第4期まで）では、5人の棋士によるリーグ戦で挑戦者を決定し、タイトル保持者と挑戦者が五番勝負を繰り広げて優勝者を決めていました。第6期からは、トーナメント戦の勝ち抜き者がタイトル保持者に挑戦する方式となり、トーナメント決勝は、第5期から第7期までは三番勝負、第8期以降は一番勝負で行われています。

碁聖戦は、長年にわたり七大タイトル戦の中で唯一、出場資格に制限が設けられていました。

第49期（2024年）までに、14名の棋士が碁聖位を獲得していますが、長期にわたってタイトルを保持する棋士が多く、大竹英雄（7期）、小林光一（9期）、依田紀基（6期）、張栩（4期）、井山裕太（10期）の5名だけで、通算36期を獲得しています。特に大竹英雄は、碁聖戦の前身である日本棋院第一位決定戦、全日本第一位決定戦でも圧倒的な強さを誇り、全日本のタイトルは大竹以外の棋士が獲得したことはありませんでした。

名誉碁聖

碁聖のタイトルを5連覇、または通算10期以上獲得した棋士には、60歳以降に「名誉碁聖」を名乗る権利が与えられます。

昇段規定

碁聖戦には、昇段に関する規定も存在します。

六段以下の棋士が碁聖挑戦権を獲得した場合、七段に昇段します。
七段の棋士が碁聖位を獲得した場合、八段に昇段します。
* 八段の棋士が他のタイトルを1期獲得している状態で碁聖を獲得した場合、九段に昇段します。

2018年には、許家元がこの規定により八段に昇段しました。

エピソード

2020年には、碁聖戦のスポンサーである河北新報社の社長の息子であり、同社の記者でもある一力遼がタイトルを奪取し、大きな話題となりました。

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