磁気異方性

磁気異方性とは

磁気異方性とは、強磁性体において、磁気モーメント（微小な磁石の様なもの）の向きによって、その内部エネルギーが異なる性質を指します。内部エネルギーが異なると、磁気モーメントが安定しやすい方向（磁化容易方向）と、安定しにくい方向（磁化困難方向）が生じます。

磁気異方性の応用例

身近な例としては、クリップ磁石が挙げられます。一般的な棒磁石は、その長手方向に磁極が発生し、短い方向には発生しません。これは形状磁気異方性によるものです。しかし、クリップ磁石は、長手方向ではなく面方向に磁極が発生します。これは、結晶磁気異方性を応用した設計によるものです。

また、ハードディスクも結晶磁気異方性を利用しています。ハードディスクの記録層には、六方最密充填構造（hcp）を持つコバルト（Co）系合金が用いられており、個々の結晶粒の磁化は、磁化容易方向であるc軸（hcp（002）面）のいずれかの方向を向いています。この磁化の方向を0と1に対応させ、デジタル情報を記録しています。

磁気異方性の分類

磁気異方性は、その起源によって以下の3つに分類されます。

1. 結晶磁気異方性

磁性体の結晶構造に起因する磁気異方性です。結晶の特定の方向に磁化容易方向または磁化困難方向が存在します。磁化の容易・困難の方向は、結晶内の原子配列（結晶の対称性）に依存し、その主な起源はスピン軌道相互作用です。

2. 形状磁気異方性

磁性体の形状が完全な球体からずれている（等方的でない）場合に生じる磁気異方性です。一般的に、長尺方向に比べて短尺方向が磁化されにくい性質を持ちます。棒磁石のような形状は、形状磁気異方性によって長手方向に磁化しやすくなります。

3. 誘導磁気異方性

磁性体の成長過程で誘導される磁気異方性です。例えば、磁場中で薄膜を成膜する場合や、基板結晶と格子不整合のある薄膜を成膜する場合、またはスパッタ成膜時に特定の原子対が形成される場合などに生じます。

まとめ

磁気異方性は、磁性体の特性を理解し、様々な応用を実現するための重要な概念です。特に、データ記録や磁気センサーなどの分野において、その特性が広く活用されています。

参考文献

磁気異方性 - Wikipedia

関連項目

異方性
* 誘電率異方性

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