磔刑 (マンテーニャ)

『磔刑』（たっけい、伊: Crocifissione, 英: Crucifixion）は、ルネサンス期を代表する画家アンドレア・マンテーニャが1457年から1459年の間に制作した祭壇画の一部です。この作品は、ヴェローナのサン・ゼーノ教会高祭壇のために制作された大型祭壇画の裾絵（プレデッラ）の中央パネルを飾るもので、修道院長グレゴリオ・コッレールによって依頼されました。現在はパリのルーヴル美術館に所蔵されています。

歴史的背景

『磔刑』は、1798年にルーヴル美術館に収蔵され、すぐに一般公開されました。その後、1806年にはプレデッラの他のパネル画である『オリーブ山』と『復活』がトゥール美術館に移動しました。1815年には、中央パネルと両翼パネルがイタリアに返還され、ヴェローナ市立美術館に展示されました。1918年以降、これらのパネルはサン・ゼーノ教会に戻されましたが、現在では以前のように容易に見ることはできません。1815年にヴェネトから略奪された美術品の回収を担当した委員会は、ルーヴル美術館とトゥール美術館が所蔵するプレデッラのパネル画については、そのまま保持することを決定しました。

作品の特徴

祭壇画全体の中で、『磔刑』はプレデッラの中心に位置しています。マンテーニャは、パドヴァのエレミターニ礼拝堂ですでに試みたような、急激な視覚的遠近法の効果をこの作品でも追求しました。前景に描かれた人物像の一部が額縁で切り取られていることで、奥行きが強調され、場面が奥へと広がっていくような視覚効果を生み出しています。また、地面の消失点が内側に湾曲している点も特徴的です。マンテーニャの自然に対する鋭い観察眼は、風景の細部に至るまで緻密に描写されている点にも表れています。ローマ兵の装備の正確な描写は、当時のフィレンツェでは見られなかったものであり、マンテーニャが古代世界に対して抱いていた関心の深さを物語っています。フィレンツェの芸術家たちは、古代の彫刻や建築の美的特質を理解し模倣しようとしましたが、歴史的な正確さにはそれほど関心を示しませんでした。一方、マンテーニャは、考古学者さながらの情熱をもって歴史的な正確さを追求しました。実際、ヴェネト地方は、14世紀以降からイタリアにおける古代遺物取引の中心地であり、ヴェネツィア領の各都市では、フィレンツェで古代遺物の価値が認識されるよりもずっと以前から古代遺物を所有していました。

プレデッラの詳細

プレデッラは、祭壇画の下部に取り付けられた装飾パネルであり、物語や象徴的な場面が描かれています。

中央パネル: 『磔刑』は、キリストの十字架刑の場面を描写しており、マンテーニャの遠近法と細密な描写力が際立っています。
左右のパネル: 『オリーブ山』と『復活』は、『磔刑』の物語を補完し、キリストの生涯における重要な出来事を描いています。

関連事項

サンゼーノの祭壇画
ルネサンス美術
アンドレア・マンテーニャ

これらの関連事項も併せて調査することで、より深く『磔刑』への理解を深めることができるでしょう。

参考文献

作品が紹介されている書籍や論文
ルーヴル美術館の公式ウェブサイト
美術史に関する専門書


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