礼法

礼法とは

礼法とは、日本において「望ましい」とされる行動様式や、それに伴う心構えを指す言葉です。時代とともにその意味合いや形式は変化しており、現代ではエチケットやマナーといった言葉と混同されることも少なくありません。

日本礼法史

礼法は、もともと宮廷での儀礼や年中行事における礼儀作法を意味していました。それが時代を経るにつれ、貴族社会における身分秩序を重んじる精神的な心構えへと変化し、礼節や礼式といった言葉と同義で扱われるようになります。

武家社会が中心になると、礼法は規範化された行動様式として定着し、支配階級から一般庶民へと広まっていきました。明治維新後には、天皇と国民の親和を示すものとして再編され、第二次世界大戦中には軍人礼法に基づいた国民礼法が制定され、国民の行動を規定しました。敗戦後、礼法は弱体化し、西洋のエチケットやマナーが普及。現代では、消費主義や商業主義と結びついた流行として捉えられることもあります。

しかし、一部の私立中高一貫校では、礼法を教育課程に積極的に導入し、その重要性を伝えています。

武道における礼法

武道における礼法が意識されるようになったのは、江戸時代中期頃とされています。幕末から明治期には、蹲踞礼と折敷礼という礼法が確立しました。西洋式の軍事訓練が導入されると、直立不動の姿勢が普及し、武道界にも影響を与えました。

武道の礼法は、一見すると古くから伝わるもののように思えますが、実は明治末から大正、昭和にかけて、和洋折衷や国際的な基準を取り入れ、再構成されたものです。

例えば、柔道では、1940年の礼法制定までは礼法自体は重要視されていたものの、所作は厳密ではありませんでした。しかし、稲葉太郎による礼法批判や南郷次郎の礼法普及方針を受け、講道館と大日本武徳会が修行者礼法を制定。1940年の修行者礼法では、神道的で軍事的な不動の姿勢が取り入れられました。1942年12月には、右座左起が左座右起に改められるなど、戦中の神社作法改正に合わせた動きもありました。敗戦後、1967年には学生選手の試合態度を是正するため、試合礼法が制定されています。

まとめ

礼法は、時代や社会の変化に合わせて形を変えてきました。現代では、エチケットやマナーと混同されることもありますが、その根底には相手を尊重し、円滑な人間関係を築こうとする精神が息づいています。礼法を理解することは、日本の文化や歴史を深く知ることにも繋がります。


『礼法』 - コトバンク

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