社会保障局 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国社会保障局（SSA）

アメリカ合衆国社会保障局（Social Security Administration、略称SSA）は、米国連邦政府の独立した行政機関として位置づけられています。その主な役割は、アメリカ合衆国における社会保障制度および関連する社会保険プログラムの運営を担うことです。具体的には、老齢・遺族・障害者に対する各種年金や、一部の公的扶助制度を所管しています。

これらの重要な福祉プログラムを支える財源の大部分は、アメリカ国内で働く人々の所得から徴収される社会保障税によって賄われています。将来的に受給できる給付額は、原則として、個々の労働者が過去に納付した社会保障税の拠出実績に基づいて算定される仕組みです。

SSAは、合衆国法典第42編第901条の規定に基づき設立され、1994年に再び独立機関としての地位を確立しました。

組織と規模

社会保障局の本部は、メリーランド州ボルチモア市の西方に位置するウッドローンにあり、ここは「中央オフィス（Central Office）」と呼ばれています。本部の他に、SSAは米国全土にわたって組織網を展開しており、具体的には10ヶ所の地方オフィス、8ヶ所の処理センター、約1300の地域事務所、そして37ヶ所の通信サービスセンター（Teleservice Center）を有しています。2007年時点のデータによれば、約6万2000人の職員がこれらの施設で業務にあたっていました。

社会保障プログラムは、現在米国で運用されている社会福祉プログラムの中でも最も規模が大きいものです。国家予算のうち政府歳出の約37%、国内総生産（GDP）の約7%がこの制度に費やされています。特に高齢者の生活安定に大きく寄与しており、2004年に行われた調査では、65歳以上のアメリカ国民の約40%が社会保障給付によって貧困状態を回避していることが示されています。

歴史

社会保障局の起源は、1930年代にフランクリン・D・ルーズベルト大統領が推進したニューディール政策にあります。1935年8月14日に社会保障法（Social Security Act）が成立したのを受け、この新しい福祉制度を管理するために、同法に基づき社会保障委員会（Social Security Board）が設置されました。委員会は大統領によって任命された3名の理事で構成されましたが、設立当初は予算、スタッフ、備品といった基盤が全くない状態でした。一時的な運営資金は、当時の連邦緊急救済局から提供されました。

社会保障制度に関する最初の事務局は、1936年10月14日にテキサス州オースティンで開設されました。社会保障税の徴収が始まったのは1937年1月のことで、これが最初の税収総額納付となりました。制度開始後、初めて給付金を受け取ったのは、1937年1月に17セントの一括総額支払いを受け取ったアーネスト・アッカーマン氏です。月払いの退職年金が初めて支払われたのは1940年1月で、バーモント州のアイダ・メイ・フラー氏が最初の受給者となりました（初回金額は22ドル54セント）。

1939年には、社会保障委員会は連邦保障局（en:Federal Security Agency、1953年まで存在）の下に統合されました。継続的な定期給付が本格的に始まったのは1940年1月以降のことです。

第二次世界大戦後の1946年、ハリー・S・トルーマン大統領による政府再編計画の一環として、社会保障委員会は現在の名称である「社会保障局」へと改称されました。

1953年、連邦保障局が廃止されたことに伴い、社会保障局は新設された保健教育福祉省の管轄下に置かれました（同省は1980年に保健福祉省と改称）。

制度の機能改善も図られ、1972年には、年金受給者の固定収入が物価上昇によって目減りしないよう、給付額を物価変動に合わせて調整する公共料金調整（Cost of Living Adjustments：COLAs）の仕組みが社会保障プログラムに導入されました。

そして1994年、ビル・クリントン大統領が合衆国法典第42編第901条に署名したことにより、社会保障局は再び連邦政府の独立機関としての地位を確立しました。

本部所在地とその影響

社会保障局の本部は、ワシントンD.C.近郊の市街地外に位置する数少ない連邦政府機関の一つです。本部がメリーランド州ボルチモアに置かれることになった背景には、制度開始当初に膨大な量の記録書類を保管する必要があり、1936年当時のワシントンD.C.内に適切な場所が見当たらなかったという事情があります。そのため、委員会はボルチモアのインナーハーバー地区にあるキャンドラービルディングを仮の本部として選びました。

委員会設置後すぐに、ワシントンD.C.に大量の記録保管能力を持つ社会保障局本部ビルの建設が開始されました。しかし、建設が完了する頃には第二次世界大戦が始まっており、完成したビルは陸軍省に徴発されてしまいました。終戦後、SSAを再びワシントンD.C.に移転させることは多くの問題から困難となり、結果としてボルチモアに留まることになりました。1960年にメリーランド州ウッドローンに新たな本部ビルが建設され、そこへ移転するまで、SSAの本部はキャンドラービルディングを使用し続けました。

ウッドローンへの新本部移転に伴い、本部ビルの側を通るメリーランド州道122号線は「セキュリティ通り（Security Boulevard）」と名付けられました。この通りはボルチモア市と西部郊外を結ぶ主要な幹線道路の一つとなっています。また、社会保障局本部からボルチモア環状道路である州間道695号線への出入口もセキュリティ通りに接続しており、近隣のショッピングセンターは「セキュリティ・スクエア・モール」と命名されました。さらには、ウッドローン地区自体が、地元住民の間で「セキュリティ」と俗称されることもあり、SSA本部は地域に強い影響を与えています。約3500キロメートルに及ぶ州間道70号線は、SSA構内に隣接するパークアンドライド駐車場を終点としています。

現在も、本部ビルのスペース上の制約や建物の維持管理といった事情から、社会保障局の多くの職員がウッドローン周辺のリースされた複数の施設で業務を行っています。

流行新生児名レポート

社会保障局は、その主要な業務の他に、毎年母の日の直前にユニークなレポートを公表しています。これは、前年に米国で生まれた新生児に最も多く名付けられた名前のリストで、社会保障カードの申請データに基づいて集計されます。このレポートでは、男女それぞれについて上位1000件の名前が挙げられます。社会保障局のウェブサイトにある「Popular Baby Names」のページで、このリストのすべてを閲覧でき、過去・現在のデータを検索することも可能です。

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