祝福するキリスト (ベッリーニ、パリ)

『祝福するキリスト』（伊: Cristo benedicente）は、ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する巨匠、ジョヴァンニ・ベッリーニが手がけたテンペラによる板絵です。この作品は、現在パリのルーヴル美術館に収蔵されており、ベッリーニの初期の画風を今に伝える貴重な作品として知られています。

制作時期は1460年代初頭と推定されており、この頃のベッリーニは、義理の兄弟であるアンドレア・マンテーニャの影響を強く受けていました。その影響は、本作の描線に顕著に表れており、まるで彫刻のように力強く、立体感のある人物描写が特徴的です。また、色彩においては、寒色を基調とした落ち着いた色調が用いられている点も、この時期のベッリーニ作品の特徴と言えるでしょう。

『祝福するキリスト』の歴史を紐解くと、美術史家のカルロ・リドルフィが、ヴェネツィアのサント・ステファノ教会にあった「救い主の人物像」として言及している絵画が、本作である可能性が高いとされています。この教会はアウグスチヌス派に属しており、作品の宗教的な背景を読み解く上でも重要な手がかりとなります。

しかし、美術史家の間では、この説に異を唱える見解も存在します。特に、モラッシという美術史家は、リドルフィが記述した絵画を、1500年に制作されたスイスの個人コレクションに所蔵されている別の絵画と同一視しています。このように、作品の正確な由来や制作時期に関しては、いまだ議論の余地が残されており、今後の研究によって新たな事実が明らかになる可能性も十分に考えられます。

『祝福するキリスト』は、ベッリーニの初期の作風を知る上で非常に重要な作品です。マンテーニャの影響を受けながらも、ベッリーニ独自の表現を模索していたこの時期の作風は、後の彼の芸術に大きな影響を与えたと言えるでしょう。ルーヴル美術館を訪れた際には、ぜひこの作品を鑑賞し、ベッリーニの卓越した画力と、ルネサンス美術の息吹を感じてみてください。

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