神の手 (久坂部羊の小説)

『神の手』

概要

『神の手』は、現役医師でもある作家・久坂部羊による物語で、安楽死の是非や法制度の課題をテーマにしています。2008年から2010年にかけて連載され、2010年に単行本が出版、その後文庫版も登場しました。この小説では、末期がん患者に安楽死を施した医師の白川や、それを取り巻く人々のドラマが描かれています。

あらすじ

上巻

白川は、末期の肛門がん患者・章太郎の苦痛を軽減するために秘密裡に安楽死を行います。しかし、その行為は章太郎の母親・康代によって告発され、白川は刑事と検事による捜査に巻き込まれます。告訴の背後には、安楽死法の制定を推進しようとする医師・新見の影が潜んでいます。新見はマスコミを利用して白川を世論に持ち上げ、安楽死への理解を深めさせようとしますが、その過程で康代は個人的な恨みを持つ看護師の存在を持ち出し、白川に安楽死の否定声明を要求します。

下巻

公開延命治療の実施中、患者が急変し、事態は深刻な方向に向かいます。治療が続けられる中、彼の最期がメディアで報じられ、医療界の立場が揺らぎ始めます。医師たちは安楽死の必要性を訴え始め、医師大塚は追い込まれて自らの命を絶ちます。さらに、安楽死法の成立を巡る権力闘争は激化し、新見を取り巻く不穏な状況が続きます。

物語は、安楽死専用薬「ケルビム」が世界に広まることで、死への認識が変わる中、白川が医療の第一線を退くところで終わります。白川は、安楽死法の成立が本当に正しかったのかと苦悩しながら過ごす様子が描かれています。

登場人物

• - 白川泰生: 消化器外科医、安楽死を施行した医師。
• - 古林章太郎: 末期の肛門がん患者。
• - 古林康代: 章太郎の母親として安楽死法制化阻止に活動。
• - 新見偵一: 安楽死法推進派の心臓外科医。
• - 山名啓介: 消化器外科医で安楽死法案の支持者。

書評と評価

この作品は、安楽死の問題を深く探求したいという作者の思いが込められており、多くの読者に衝撃を与えています。医療の現場や法律が交わる複雑な人間関係が描かれ、登場人物たちの葛藤が物語を引き立てています。特に、白川の抱える苦悩が安楽死を考える上での重要な視点を提供しており、現代社会においても非常に意義のあるテーマを扱っています。

テレビドラマ

『神の手』は、2019年にWOWOWでドラマ化され、主演には椎名桔平が起用されました。このドラマは、原作の内容を忠実に再現しながらも新たな視点で安楽死の問題に迫りました。

結言

『神の手』は、現代医療の限界や倫理的選択について深く考えさせられる作品です。医師と患者、そしてその家族の間で巻き起こるストーリーは、見る者に重大な問いを投げかけます。この物語を通じて、安楽死というテーマが私たちに何を意味するのか、さらに考察が必要な問題であることを強く感じさせられるでしょう。

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