神保小虎

神保小虎：明治・大正時代の地質鉱物学者

神保小虎（じんぼことら、1867年6月19日-1924年1月18日）は、明治時代から大正時代にかけて活躍した著名な地質鉱物学者です。幕臣の子として江戸で生まれ、東京帝国大学理科大学（現在の東京大学理学部）を卒業後、北海道庁技師や全道地質鉱産調査主任を務めました。

学究の道と国際的な視野

1892年にはドイツのベルリン大学に留学し、鉱物学や岩石学を深く学びました。帰国後の1894年には母校の東京帝国大学理科大学助教授に就任、1896年には教授に昇進、鉱物学教室の設立と同時に主任教授となり、鉱物学講座を担いました。

神保の研究活動は国内にとどまりません。1906年には樺太、1915年にはロシアのウラジオストク地方の調査を行い、地質学・地理学の分野に貢献しました。これらの経験は、彼の専門性を高め、国際的な視野を養う上で大きな役割を果たしたと言えるでしょう。

教育者としての顔

大学教授として、神保は後進の育成にも尽力しました。彼の講義は、専門知識の教授だけでなく、独特のユーモアや魅力にあふれていたと伝えられています。驚くべきことに、彼はアイヌ語にも精通しており、アイヌ語で講義を行ったこともあったようです。このエピソードは、彼の多様な興味関心と、異文化理解への深い関心を示しています。

学会活動と社会貢献

神保は、日本の地質学の発展にも大きく貢献しました。東京地質学会（現在の日本地質学会）会長、東京地学協会会長などを歴任し、日本の地質学界を牽引する存在でした。彼の指導力と尽力は、日本の地質学研究の進歩に大きく寄与しました。

人となり

学生からは「変わり者」として知られていた神保ですが、そのエピソードは、彼のユニークな性格と魅力を表しています。教え子によると、学生時代に大学構内の寄宿舎から遊郭に通うため塀を切断し、停学処分を受けたという逸話が残されています。しかし、彼はその停学命令を学生たちに自慢げに見せ、笑わせていたそうです。

業績と栄誉

神保の業績は、後世の研究者にも大きな影響を与えました。1963年には、鉱床学者である渡辺武男によって、彼が発見したマンガンホウ酸塩新鉱物が「神保石」と命名されました。これは、彼の地質学への貢献を称える、大きな栄誉と言えるでしょう。

家族

神保の家族もまた、それぞれの分野で才能を発揮していました。弟は言語学者として、妻は山口士族の娘で、長男は東北大学名誉教授、長女は大日本印刷社長の妻となりました。家族全体が知的な環境に囲まれていたことがうかがえます。

結論

神保小虎は、優れた地質鉱物学者であると同時に、ユニークな個性と深い人間性を持ち合わせた人物でした。彼の研究活動、教育活動、そして社会貢献は、日本の地質学の発展に大きく貢献し、今日まで多くの研究者たちに影響を与え続けています。彼の生涯は、学問への探究心と、豊かな人間性を兼ね備えた、稀有な人物像を示す好例でしょう。神保小虎という名は、日本の地質学の歴史に、永遠に刻まれることでしょう。

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