神保石

神保石：日本産新鉱物の輝き

1963年、日本の地質学研究に新たな1ページが刻まれました。栃木県加蘇マンガン鉱山で発見された新鉱物、神保石（じんぼせき、Jimboite）です。この発見は、東京大学の鉱床学者であった故渡辺武男博士によるものでした。

発見の経緯は興味深いものです。鉱石自体は加藤昭氏と櫻井欽一氏によって発見されましたが、その顕微鏡下の性質が、それまでに知られていた小藤石と類似していることから、新鉱物である可能性が示唆されたのです。詳細な分析の結果、神保石は独自の化学組成と結晶構造を持つことが明らかになり、新鉱物として認められました。

鉱物名は、東京帝国大学で活躍された故神保小虎博士の鉱物学への多大な貢献を称えて命名されました。神保博士の業績は、日本の鉱物学研究の発展に大きな影響を与えたと言われています。

神保石の化学組成式はMn3(BO3)2で、斜方晶系に属します。これは、渡辺博士が以前に発見した小藤石のマグネシウムをマンガンで置換した組成と言えるでしょう。さらに、マンガンをカルシウムで置換すると、別の鉱物である武田石になります。この化学組成の違いによって、神保石、小藤石、武田石といった異なる鉱物が生み出されるのです。

肉眼で見ると、神保石は紫赤褐色をしています。しかし、顕微鏡下ではほぼ無色透明で、条痕色も無色です。モース硬度は5.5と、比較的硬い鉱物に分類されます。

神保石は、マンガンとホウ素を含む希少な鉱物であり、その結晶構造や生成条件など、まだ解明されていない部分も多いです。今後の研究によって、神保石に関する知見がさらに深まることが期待されます。また、その希少性から、鉱物コレクターの間でも注目を集めています。

神保石の発見は、日本の鉱物学研究の進歩を示すだけでなく、自然界の多様性と奥深さを改めて認識させてくれる重要な出来事と言えるでしょう。今後も、新たな鉱物の発見や既存鉱物の研究を通して、地球の成り立ちや資源の有効活用に関する理解が深まっていくことが期待されます。

神保石に関する情報は、コトバンクなどのオンラインデータベースでも確認できます。より詳細な情報や最新の研究成果については、専門書や学術論文を参照することをお勧めします。

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