神保綱忠

神保綱忠の生涯と業績

神保綱忠（じんぼう つなただ）は、江戸時代中期に米沢藩に仕えた家臣であり、優れた儒学者としても知られています。彼の父、神保忠昭は同藩の士であり、剣術や軍学に精通した人物でした。綱忠が執る家格は五十騎組にまで昇進し、家族は歴史に名を残しています。

綱忠の家族の歴史は、上杉景勝の時代にさかのぼります。彼の高祖父、作兵衛俊忠は御膳部組として取り立てられ、その後、五十騎組に組み込まれました。綱忠の父は、剣士として多くの弟子を育て、その名声を広めていましたが、綱忠自身は剣術に執着せず、後に儒学の道を選びました。

綱忠は宝暦9年（1759年）に江戸に上り、細井平洲の門下に入ります。藩主の上杉治憲（後の鷹山）の学友にも選ばれ、彼に仕えながら儒学の修行に励みました。やがて、平洲の下で学問を重ね、自ら塾長として講義を行うまでに至りました。

30歳で米沢に戻った際、彼は藩校の設置に取り組むよう命じられました。鷹山との関係を深めつつ藩校興譲館の設立に向けた努力をし、塾の設立に尽力しました。彼は興譲館の提学として藩士たちの教育を担当し、さらに重要な役職を受け継ぐこととなります。

神保家の歴史と共に育った綱忠の時代には、鷹山による改革が重要な役割を果たしました。しかし、天明2年（1782年）に父が死去し、家督を相続した後、藩の厳しい財政状況に直面し、一時的に失脚することもありました。具体的には、財政の立て直しにあたって無駄な支出を削減するため、自己の提学としての俸禄を上げる形で退くこともあったといわれています。

その後も、寛政元年（1789年）に復職し、寛政の改革に関与しました。町奉行次役となり、さらに六人年寄の一員にもなるなど、彼の政治的影響は高まりました。綱忠は、藩の政策において「転法派」に属し、他の派閥との対立が続きました。彼の政策提言はしばしば主流派との激論が行われ、特に莅戸善政との対立が顕著でした。

享和元年（1801年）時点では、綱忠は政策批判を行い、意見を表明しましたが、彼の思想は主流派に受け入れられず、反発が強まりました。莅戸善政の死後、彼の影響力は一時的に増しますが、依然として内的な対立は続きました。

文化4年（1807年）には、特産品の青苧に関する改革案を提議しましたが、家臣や領民からの反発により中止となりました。この経験から、彼は一時的に政事参与の職を解かれました。それでも、興譲館の督学としての地位は保たれ、後に私塾を開設し若者たちの指導に力を入れました。

晩年には、「宜斎堂集」を刊行し、誰もが学びやすい環境の構築に努めました。1924年には正五位を追贈され、彼の業績が高く評価されることとなりました。綱忠の生涯は、米沢藩の教育と改革に大きな影響を与え、後世にもその影響が形として残っています。

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