莅戸善政

莅戸善政の生涯と功績

莅戸善政（のぞき よしまさ）は、江戸時代中期における米沢藩上杉家の家臣として、その政治的才能を発揮しました。彼の諱は善政で、通称は九郎兵衛であり、隠居後は六郎兵衛と名乗りました。善政は、初めは馬廻組という下級武士から経験を積み、一代侍組に昇格を果たします。さらに、初めは180石という石高からスタートし、後に奉行職に就任して1000石へと昇進しました。

彼の成功の背景には、優れた財政感覚がありました。善政は竹俣当綱などの有能な藩士と共に、上杉鷹山の命を受けて藩政改革に積極的に取り組みました。しかし、鷹山の財政改革が失敗に終わったことから、善政は失脚し一時は隠居を余儀なくされました。それにもかかわらず、寛政期に再び鷹山の要請を受けて復帰し、再度改革を主導することになります。

経歴の詳細

善政は、父の死去を受けて元文5年に家督を相続しました。その後、平番総筆頭として活動し、宝暦9年には上杉重定の侍医藁科松伯の門弟となり、竹俣当綱の信任を受けることになります。彼は藩政を掌握していた森利真を打倒するために活動し、血判書に署名するなど、藩の行く末を見守っていました。

明和4年には小姓に任命され、明和6年に町奉行に就任。その後、義倉設置の提案などを行い、多くの改革に貢献しました。安永元年に小姓頭に任じられるも、七家騒動に巻き込まれ出勤停止を余儀なくされました。安永4年からは興譲館惣監を兼務し、天明2年には竹俣の隠居によって小姓頭を辞職しましたが、既に名声は広まり、天明7年には江戸幕府から表彰されるほどでした。

寛政3年、改善の要請に応じて再勤し、改革政策「総緋」を発表しました。その後、500石へ昇進し、丸山蔚明、神保綱忠などと共に「寛三の改革」を推進します。寛政10年には、奉行に就任し、1000石へと昇進、名実ともに藩政改革を先導する立場となります。しかし、同時に神保との対立が深まる中、後継者の政以を自らの補佐に任じました。

寛政12年には飢饉救済のための手引書「かてもの」を執筆し、米沢藩の未来を見据えた取り組みを続けました。彼は長泉寺に埋葬され、1908年には正五位を追贈され、米沢松岬神社に合祀されています。

人物像と交流

善政は非常に努力家であり、上杉鷹山時代の重要人物であった高山彦九郎とも面識がありました。彼の初期の生活は厳しいもので、米が底をつくほど貧乏でしたが、町奉行時代には町人の贅沢を制し、自己模範を示していました。「焼味噌九郎兵衛」というあだ名がその表れです。

七家騒動の際には処罰を覚悟して子の政以に遺書を書くものの、結局のところ処罰は受けなかったため、未成の遺書となりました。その死の際には、治憲が自ら出向いて見舞うなど、彼の人脈と影響力が感じられます。善政の生涯は、米沢藩の改革とその後の歴史において、重要な役割を果たしました。

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