神奈川方式

神奈川方式の概要

神奈川方式は、かつて神奈川県立高等学校が採用していた独自の選抜方法です。この方式では、内申書、学力試験、そしてアチーブメントテスト（通称アテスト）の得点が選考資料として使用され、特殊な運用がされていました。特に、アチーブメントテストを取り入れることで、従来の学力試験の占める割合を下げる利点があった一方、いくつかの問題点も指摘されていました。

選抜方法の詳細

選抜方法の具体的な内容は以下の通りです。

• - 内申書

- 中学2年の3学期と3年の2学期の評点が評価の対象となり、比重は50%でした。

• - アチーブメントテスト

- 中学2年の3学期に実施されるこのテストは、2日間にわたり9教科（国語、数学、理科、社会、英語、美術、体育、音楽、技術家庭）で行われました。このテストの初期の比重は25%でしたが、後に20%へと見直されました。

• - 学力検査

- 3年の3学期に行われるこの検査では、5教科（国語、数学、理科、社会、英語）の筆記試験が実施され、当初の比重は25%でしたが、後に30%に引き上げられました。

この選抜方式は、主要な5教科に加え、実技科目に関連する評価バランスが不適切であるとして、県議会で問題視されていました。特に、アチーブメントテストでは実技4教科の得点が半減されて加算されるため、内申書での実技への比重が大きくなり、教師による評価基準が不透明な部分がありました。これにより、評価が教師による恣意的なものになっていたという指摘がありました。

選抜方式の問題点

神奈川方式の問題点も多岐にわたりました。まず、実技4教科の評価基準が公表されていなかったため、教師次第で評価が変わる可能性がありました。これにより、公正な競争が難しくなっていました。また、アチーブメントテストと2年次の内申点によって公立高校への入学判断が40%程度決まるため、生徒は中学2年終了時点で志望校をある程度絞り込まざるを得ませんでした。さらに、中学3年の内申点まで加えると、入学試験の前に70%以上の評価が決まるため、試験の結果をひっくり返すことが難しくなるという問題が生じました。

これにより、試験が不調だった生徒はやる気を失い、逆に良好な成績を収めた生徒はのんびりとした態度に陥ることが指摘されていました。加えて、県外から転入した生徒はアチーブメントテストで点数がゼロとして扱われ、不公平な扱いを受けることもあったため、多くの問題が内包されていました。

地盤沈下の原因

さらに、地域によっては高校の選択肢が狭められ、生徒が志望校に挑戦しにくくなる「輪切り」進路指導を導入したことが問題視されました。この結果、公立高校の入試を目指す優秀な生徒が志望校を私立に切り替える事例が増え、県内の名校とされていた厚木高校や湘南高校への受験が地元の生徒に限定されました。これが、大きな地盤沈下の要因になったとされます。

最後に、神奈川方式は1997年に廃止され、その後の選抜方法へと移行しましたが、この問題の根深さは未だに教育界で語られています。

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