神奈川県立大楠高等学校

神奈川県立大楠高等学校は、かつて神奈川県横須賀市荻野に所在した公立高等学校です。地域の教育機会拡充への強い要望に応える形で、1980年（昭和55年）に開校しました。全日制普通科を設置し、地域に根ざした教育活動を行いましたが、神奈川県立横須賀明光高等学校との統合に伴い、2020年（令和2年）3月末をもって閉校しました。統合後は、神奈川県立横須賀南高等学校として新たな歴史を刻んでいます。

教育課程の特色

創立30周年を目前にした2009年度（平成21年度）からは、神奈川県教育委員会の指定を受け、田奈高校、釜利谷高校と共に「クリエイティブスクール」として独自の教育プログラムを展開しました。これは、多様な学習ニーズを持つ生徒に対し、個々の能力を最大限に引き出し、社会で自立するための力を育むことを目指した取り組みです。

教育上の大きな特色は、全ての授業を30名以下の少人数で行っていた点です。これにより、生徒一人ひとりに対する手厚い指導を実現し、特に基礎学力の定着に重点を置きました。必修科目として、「総合基礎」は中学段階の学び直しを含めた基礎学力の確実な習得を、「社会実践」は社会生活を送る上で不可欠な知識や態度、コミュニケーション能力などを養うことを目的としていました。さらに、毎朝10分間、短時間で集中して学習に取り組む「朝学習」も必修化し、学習習慣の確立や集中力の向上を図りました。

入学者選抜

神奈川県立大楠高等学校では、クリエイティブスクールの理念に基づき、学力検査や中学校の調査書における5段階評定に依らない、独自の入学者選抜方法を採用していました。これは、多様な個性や可能性を持つ生徒たちを受け入れるための配慮でした。

前期選抜、後期選抜のいずれにおいても、共通の学力検査は実施されませんでした。中学校からの調査書に記載される評定も、合否判定には用いられませんでした。

特に前期選抜では、従来の県立高校の募集枠上限が50%であったのに対し、80%という高い募集割合を設定していました。出願時には、自己PR書の提出は求められず、事前に提示された課題に関するレポートの提出が必要でした。面接においては、提出されたレポートの内容を踏まえ、1分程度の自己プレゼンテーションを行う機会が設けられていました。

後期選抜では、面接に加え、「自己表現活動」という学校独自の評価方法を取り入れていました。これにより、学力以外の生徒の能力や適性、意欲などを総合的に判断し、入学を希望する生徒の多様性に対応していました。

沿革

神奈川県立大楠高等学校の主な沿革は以下の通りです。

1980年（昭和55年）: 地域の要望を受け開校。
2009年（平成21年）4月1日: クリエイティブスクールに指定される。
2020年（令和2年）3月31日: 神奈川県立横須賀明光高等学校との統合に伴い閉校。神奈川県立横須賀南高等学校となる。

校舎

校舎の構造は標準的なものでしたが、いくつかの特徴的な箇所がありました。特に、校内の中庭はヨーロッパ風の雰囲気に造られており、生徒たちの憩いの場として親しまれていました。また、学校の正門正面には、校名の由来とも推測されるクスノキの大きな木が植えられており、学校のシンボルとして生徒や教職員、地域住民に認識されていました。

アクセス

学校への主なアクセス手段は、京浜急行バスの利用でした。最寄りのバス停留所としては、「鹿島」停留所（徒歩約7分）、「市民病院前」停留所（徒歩約9分）、そして「林」停留所（徒歩約15分）などがあり、各方面からの通学が可能でした。

主な出身者

神奈川県立大楠高等学校からは、様々な分野で活躍する人材を輩出しました。主な出身者としては、プロ野球選手として活躍した今関勝氏や、国際的な舞台で活躍する日英同時通訳者の菅原将志氏などが挙げられます。

神奈川県立大楠高等学校