神子畑選鉱所

神子畑選鉱所の歴史と役割

神子畑選鉱所（みこばたせんこうしょ）は、かつて兵庫県朝来市佐嚢に位置していた鉱石の選別施設です。ここは、三菱合資会社や三菱金属、さらには明延鉱業が運営していた重要な場所でした。選鉱所の歴史は、戦国時代に遡ります。当時は神子畑鉱山として知られ、繁栄を誇りましたが、生野鉱山の発展により、その地位を奪われ、一時的に休山していました。

近代の再興

約300年後の1878年、明治政府が神子畑に新たな銀鉱脈を発見し、翌年から本格的な採掘が始まりました。1919年に明延鉱山の選鉱場として「神子畑選鉱所」が設立されました。それに伴い、鉱石の効率的な運搬のために専用道路も新設され、周辺地域の鉱山業は活気を取り戻しました。明延鉱山は、金属鉱山として長きにわたり、金、銀、銅、鉛、錫といった貴重な鉱石を採掘していました。

この選鉱所では、明延鉱山から採掘された鉱石が選別され、16キロ南東にあった生野鉱山に併設された生野製錬所や、国鉄播但線経由で飾磨港から直島の精錬所へと運ばれる中継地点としても機能していました。選鉱所の最盛期には約3000人が従事し、その規模と生産量は「東洋一」と称されるほどまでに至りました。

「鉱山王」と五代友厚の関与

神子畑鉱山が再興された背景には、「鉱山王」として知られる五代友厚の存在があります。彼は明治政府の銀鉱脈発見に先駆けて、鉱脈探しを指示したとされ、幕末から続く富国策の一環として、多くの鉱山の再開発に寄与しました。彼の指示を受けた部下の加藤正矩が神子畑の採鉱跡を掘り起こしたことが、選鉱所設立に繋がったと言われています。

運搬と輸送システム

選鉱所までの鉱石運搬は、初期には馬車道が使われ、その後は明神電車（俗称：一円電車）によって効率化されました。選鉱所から生野精錬所、または播但線の新井駅までの精鉱の輸送も、このインフラを通じて行われました。明延鉱山は1987年に閉山し、その後神子畑選鉱所も操業を終了しました。

遺構と観光資源

閉山後、選鉱所の建物は長い間残存していましたが、2004年に解体されました。現在は、選鉱所の基礎構造物やインクライン跡がわずかに残されています。2006年ごろには、国道429号沿いに「鉱石の道 神子畑ステイション」という史跡公園として整備され、訪れる観光客に向けて地域の歴史を知る場となっています。

交通アクセス

神子畑選鉱所へのアクセスは、JR播但線の新井駅からタクシー利用で約15分の距離です。しかし、当時運行されていた路線バスやコミュニティバスはすでに廃止されています。そのため、訪れる際はタクシー利用が推奨されます。この地での鉱山の歴史を感じながら、神子畑選鉱所跡を散策することができるでしょう。

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