神宮教

神宮教：伊勢信仰を基盤とする教派神道の流れ

神宮教は、伊勢信仰、特に伊勢講を母体として成立した教派神道の一派です。明治時代に教派神道として独立し、その後、神宮奉斎会へと発展改組されました。ここでは、その成立から変遷、そして現代との繋がりについて解説します。

伊勢信仰の布教母体としての成立

1872年（明治5年）、伊勢神宮の少宮司であった浦田長民が、神宮教会の設立を願い出ました。浦田は教部省にも所属しており、設立と同時に教学のための神宮教院の設立も計画。教徒のための講社を設け、従来の伊勢講を基盤に神宮教会の傘下として再編成を行いました。神宮教院は、神宮教会の中枢として機能しました。

1873年（明治6年）には、伊勢神宮の大宮司である本庄宗秀が2000両を献金。この献金を元に、全国の教会の模範となる説教館が設置され、「時擁館」と名付けられました。これは明治神宮内の神宮教会を意味していました。各地の講社は愛国講社などと称していましたが、同年10月には統一され神風講社となりました。

同年7月から12月にかけて行われた神宮教会の巡教では、浦田が企画を担当し、本庄や他の教導職が説教を行いました。多い日には9000人以上、そうでなくとも数百から2000人程度の聴衆が集まりました。大教院が瓦解すると、浦田の教化策に従い、東京に出張所を設け、全国の各教区に本部教会と支部教会を設置しました。

教派神道としての独立と展開

1882年（明治15年）、「明治十五年一月二十四日内務省達乙第七号」により、祭祀を司る神官と布教を行う教導職との兼務が廃止されました。これを受けて神宮司庁と神宮教院が分離し、神宮教院が神道神宮派という教派神道の一派として独立しました。浦田長民が退任した後、田中頼庸が初代管長に就任しました。同年10月には、教派神道の各派が派名で独立していたものの、分派ではないとしてそれぞれ教団名としました。

神宮大麻と神宮暦の製造と頒布は、当初、神宮教院への委託と取り決められましたが、翌年には製造は神宮司庁が、頒布は神宮教院が担当することとなりました。

また、同年には東京日比谷の神宮司庁東京出張所の所有していた不動産が神宮教院の所有となり、神宮遥拝殿は神宮教院の所有となり、大神宮祠（通称、日比谷大神宮）と改称されました。この大神宮祠は、震災による焼失の後、東京大神宮となりました。

神宮奉斎会への発展改組とその後

1899年（明治32年）9月24日、国家神道の確立とともに活動の余地が狭まり、また国家事業である神宮大麻の頒布を一つの教派にゆだねることへの批判から、崇敬者による団体である財団法人神宮奉斎会と改組されました。第二次世界大戦後、神道指令に伴い、1946年（昭和21年）1月23日には、大日本神祇会、皇典講究所、神宮奉斎会の3団体が中心となり、神社本庁を設立しました。

現代における神宮教

現在、兵庫県丹波篠山市に同名の宗教団体が存在します。この団体は戦前の神宮教の直接の後継団体ではありませんが、伊勢太神宮の分霊を祭神としています。また、神社本庁別表神社である生田神社宮司の日置春文を管長とするなど、伊勢神宮・神社本庁と無関係に設立されているわけではありません。

神宮教は、伊勢信仰を基盤とし、明治時代の宗教改革の中で教派神道として独立、国家神道体制下で重要な役割を果たし、現代にもその流れを汲む団体が存在するなど、日本の宗教史において重要な位置を占めています。

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