神州魑魅変

谷恒生の著書『神州魑魅変』は、元禄時代を背景に、江戸での権力争いや人間関係の物語を描いた伝記小説です。物語の中心には、下野国葉月藩の重臣・内藤帯刀が謀殺される事件があり、その首謀者として江戸幕府の重鎮、柳沢吉保が現れます。吉保の狙いは、葉月藩が持つ金の鉱脈「黄金の竜」を手に入れること。これを実現するには、高天原の雲上人の血を引く帯刀の娘・織絵と交わる必要があるというのです。

物語は、吉保が織絵を連れ去るところから始まりますが、葉月藩主の弟である影七郎が彼女を救おうとします。影七郎は幼少の頃から自身の宿命を受け入れ、天流不動剣を修得しており、藩を影から守る役割を果たしていました。しかし、彼は普段は放蕩者として振る舞い、この正体を隠しています。

影七郎は、吉保やその手下たちの妨害を受けながらも「黄金の竜」を探す旅に出る決意をするものの、織絵が再び捕えられてしまいます。その後、江戸幕府の将軍・綱吉が「黄金の竜」の在り処を明らかにしてしまい、織絵は責任を感じて自ら命を断つことになります。

この悲劇の後、影七郎は織絵を失い、心に深い悲しみを抱えながら京・嵯峨ヶ原へ赴きます。彼はそこで五色の女霊と交わり、『魑魅の力』を受けてさらなる力を得て、茶臼岳へ向かうことになります。影七郎を心配する絵草子書きの寒月一凍や、忍者の麻蔵、そして再び「黄金の竜」を狙う吉保と紀伊國屋のガードなど、様々なキャラクターが描かれ、物語は複雑に絡み合います。

物語の中には魔人の存在が大きく関与してきます。彼は元禄の世を滅ぼすことを目論み、綱吉に憑依して「黄金の竜」を探し続けます。影七郎は、織絵の霊の助けを受けながら、この魔人との対決に挑むことになります。物語は影七郎の成長や、彼に関わる人々との絆、そして権力の狙いが渦巻く中で進行し、最終的には影七郎が魔人を撃破する結末を迎えます。

登場人物は非常に多彩であり、影七郎の運命を共にする織絵、彼を支える友人たち、敵となる剣士や悪党たちがそれぞれの役割を果たします。特に、影七郎の宿命と成長を描いた物語は、権力や愛、運命といったテーマを深く掘り下げており、読者に強い印象を与えます。

この小説は、1988年には全4巻のOVAとしてアニメ化され、その魅力が映像でも表現されています。声優陣も豪華で、影七郎役の海津亮介をはじめとする多彩なキャストが参加しています。物語の展開とキャラクターの多様性は、読み手を引き込む要素となり、多くの層から支持を受ける作品となっているのです。

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