神戸事件

神戸事件（こうべじけん）

神戸事件は、1868年1月11日（慶応4年1月4日）、現在の神戸市三宮神社付近で発生した一連の出来事です。この事件では、備前藩の兵士がフランス人水兵を負傷させ、その後銃撃戦に発展しました。この衝突は、居留地の公使たちに対しても攻撃が加えられる結果となり、結果として明治政府にとって初めての外交問題となりました。

背景

発端は1868年1月3日に始まる戊辰戦争です。この戦争を受け、明治政府は備前藩に西宮の警備を命じました。備前藩は迅速に2,000人の兵を配置、その中の480人は大砲を携えて神戸へ向かいました。この際、従来の迂回路ではなく西国街道を通行したことが、この後の衝突の引き金となります。

1月11日、備前藩兵が信号機を通過中、２人のフランス人水兵が隊列を横切ろうとしました。日本側にとってこれは非常に無礼な行為とされ、藩の指揮官である滝善三郎が制止に入りました。しかし、言葉の壁もあり、水兵は無理に隊列を横切る試みを続けたため、滝は槍での制止を試み、結果的に水兵に軽傷を負わせてしまいました。

銃撃戦の展開

水兵たちは拳銃を取り出し、これを見た滝が発砲の指示と誤解した兵士たちが発砲しました。小規模な銃撃戦が展開され、その弾は頭上を飛び越え、近くの旧幕府税関の屋根を貫通しました。イギリス公使のハリー・パークスが現場に居合わせ、激怒して居留地の各国艦船に連絡しましたことから、外国軍が神戸中心部を占拠する事態となりました。

この時点では、明治政府はまだ正式に外国に政府の権威を示していない状況であり、国際的な緊張が高まりました。急遽、政府は開国和親を宣言し、交渉を開始しました。

外国側の要求

外国側は日本に対し、事件の責任を追求し、滝の厳罰を求めました。この要求が非常に高圧的であったため、日本側には強い反発もありました。交渉は長引き、最終的に滝は切腹することになりました。これは明治政府の対外的な立場を確固たるものにするための苦渋の選択でした。

事件の影響

この事件は、日本における外交政策の大転換を象徴するものとなった。攘夷政策から開国和親政策への移行を余儀なくされた結果、明治政府は自らを国際社会の一員としての立場を明確にしました。しかし、この方針転換の影響で国内に混乱も生じ、当時の政権に対する信頼が揺らいだ側面もありました。

神戸事件は、もし解決が不調に終わった場合、薩英戦争のような状況を引き起こしかねない重要な出来事でした。その意味でも、滝善三郎の犠牲は日本の外交政策の転換の重要な一歩となりました。

逸話

事件の最中、後に知名度を上げる海軍戦略家アルフレッド・セイヤー・マハンが米国艦イロコイ号の副長を務めていたことも語り継がれています。また、日置帯刀の家臣であった高山紀齋がのちに東京歯科大学を創立するなど、さまざまな歴史的な人物がこの事件に関与しています。

結論

神戸事件は明治新政府の対外的な立場が試される重要な事件であり、近代日本における外交史においても極めて重要な位置を占めています。また、国内外における認識の変化や、外交政策の方向転換が進んだことを示す契機として、今なお多くの研究がなされています。

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