神戸市交通局100形電車

神戸市交通局100形電車

神戸市交通局100形電車は、かつて神戸市電（神戸市交通局）で使用されていた路面電車車両です。1964年に大阪市交通局（大阪市電）から801形20両が譲渡されました。

導入の経緯

1960年代に入ると、神戸市電は赤字経営に苦しむようになりました。しかし、当時は市電の全廃は考えておらず、高架化構想を打ち出すなど、路面電車事業の再構築を目指していました。

神戸市は東西に長く南北に狭い地形のため、他の鉄道路線との並走区間が多く、700形などの大型ボギー車が使用されていました。一方で、300形や400形などの単車も頻繁に運行されていました。しかし、これらの単車は輸送力が低く、乗務員一人当たりの生産性が低いという問題がありました。さらに、車両自体も老朽化が進んでおり、特に300形は市電創業時から使用されていた車両の台車を流用していたため、状態は深刻でした。

1960年には1100形が増備されましたが、赤字経営のため新車の導入は困難でした。そこで、1963年に地下鉄3号線（後の四つ橋線）の建設により余剰となった大阪市電の801形と901形を購入することになりました。こうして、801形は100形、901形は200形として神戸市電に導入されました。

車両概要

100形は、神戸市電への導入に際して大阪車輌工業で改造を受けました。電装機器はそのままに、車体を中心に改造が行われました。主な改造点は以下の通りです。

正面窓: 変則的な2枚窓から、左側が大窓、右側に2つの小窓がある3枚窓に変更されました。これは、大阪市電時代にガラス不足から窓が分割された車両を、換気のために実際に3枚窓にしたものです。
行先表示: 正面中央に行先方向幕、右側には経由地表示幕が設置されました。どちらの窓枠もHゴム支持でした。また、神戸市電では系統板を使用するため、正面右側窓下に系統板差しが取り付けられました。
ライト: ライトの位置が正面窓上から窓下に変更されました。ただし、神戸市電のボギー車に取り付けられていた方向指示器は取り付けられませんでした。
ドア: 116 - 120号車は前部ドアが自動ドアに改造されました。また、前部ドア窓がHゴム支持に改造された車両もありました。中央扉は幅が広すぎたため、3分の2程度しか開かないように改造されました。さらに、119, 120号車は車掌台を広くするために中央扉の幅を狭める改造も行われました。

台車の関係で車体前部床下のスペースが狭かったため、神戸市電式のフェンダーストライカーは取り付けられませんでした。これが後に100形の命運を左右することになります。

大阪市交通局は、長年の関係がある神戸市交通局に車両を譲渡するにあたり、801形と901形の中から事故歴や戦災復旧歴のない、状態の良い車両を選んで譲渡しました。

100形と200形は、大阪から阪神北大阪線を経由して神戸市電の長田工場まで自走で移動しました。

運用と廃車

100形は1964年春から順次運行を開始し、石屋川車庫と和田車庫に配属され、300形・400形などの単車を置き換えました。

しかし、乗務員からは「運転台が狭くて運転しにくい」「パワー不足で坂を登るのが大変」といった不満の声が上がりました。さらに、フェンダーストライカーが装備されていなかったことが原因で人身事故が発生し、運行停止となってしまいました。これにより、一度置き換えたはずの単車が再び使用されることになりました。

その後、100形は運用に復帰しましたが、路線縮小の方針により、1968年4月21日の第一次路線縮小に伴い、同年5月1日付で全車廃車となりました。

廃車後、一部の車両は須磨沖で漁礁として沈められましたが、学校や民間施設に払い下げられた車両もありました。

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