神戸市文書館

神戸市文書館：歴史と文化を紡ぐ建築

神戸市中央区に位置する神戸市文書館は、単なる行政機関としての役割を超え、神戸の歴史と文化を深く理解するための貴重な拠点となっています。その建物は、かつて私立池長美術館として知られ、数奇な運命を辿ってきた歴史を秘めています。

池長美術館から神戸市文書館へ

1938年、実業家である池長孟氏によって設立された私立池長美術館は、氏の収集した美術品を展示する場として開館しました。アールデコ調のデザインが施された、洗練された建物は、当時から人々の注目を集めました。しかし、戦争の影響により1944年に閉鎖を余儀なくされます。

戦後、神戸市が建物を譲り受け、1951年には神戸市立美術館として再出発。その後、1965年には神戸市立南蛮美術館と名称変更されました。そして、1982年に新たな市立博物館が建設されると、美術品はそちらに移転され、熊内町の建物は再び閉鎖されました。

その後、神戸市制100周年を記念し、1989年にこの建物は神戸市文書館として新たな役割を担うことになります。「新修神戸市史」の編纂に用いられた資料を中心に、神戸市の歴史と文化に関する貴重な文書や資料が保管・公開されるようになりました。2000年には、その歴史的・建築的価値が認められ、神戸市景観形成重要建築物に指定されています。

建物の魅力：アールデコ調の優美さ

神戸市文書館の建物は、その建築様式からも注目に値します。設計は小川安一郎氏、施工は藤木工務店が担当し、1937年に竣工しました。RC造3階建ての建物は、大理石をふんだんに使用したアールデコ調の装飾が特徴的で、当時の洗練された建築技術と芸術性を物語っています。現在もその美しい姿は、多くの人々を魅了し続けています。

貴重な収蔵資料：神戸の歴史を紐解く

神戸市文書館には、神戸市の歴史を紐解くための貴重な資料が数多く収蔵されています。江戸時代から現代までの古文書、居留地関係文書、明治から昭和にかけて発行された新聞や雑誌、そして神戸市政に関する行政資料など、多岐にわたる資料が保存されています。これらは、研究者や市民にとって、神戸の歴史を深く理解するための貴重な情報源となっています。

特に注目すべきは、神戸市域で発行された新聞です。明治時代から昭和時代にかけての新聞記事からは、当時の社会情勢や市民生活の様子を知ることができます。また、神戸の旧居留地で発行されていた英字新聞は、国際的な視点からの神戸の歴史を研究する上で貴重な資料となります。

さらに、神戸市史や新修神戸市史といった図書・文献類も充実しており、神戸の歴史研究の拠点として重要な役割を果たしています。

利用情報とアクセス

神戸市文書館は、歴史研究に携わる研究者や、神戸の歴史に関心のある市民にとって、まさに宝庫と言えるでしょう。開館時間は9時～12時、13時～17時。休館日は土曜日、日曜日、祝日、年末年始です。

アクセスは、山陽新幹線、神戸市営地下鉄山手線および北神線の新神戸駅から徒歩約10分。または、神戸市バス2系統または18系統の「熊内5丁目」バス停下車です。

神戸市文書館は、単なる資料保管施設にとどまらず、神戸の歴史と文化を未来へと繋ぐ重要な役割を担っています。その歴史的建造物と貴重な資料は、神戸市民にとって誇りであり、未来世代への大切な遺産と言えるでしょう。

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