神明恵和合取組

神明恵和合取組（かみの めぐみ わごうの とりくみ）

神明恵和合取組とは、1890年3月に新富座で初演された歌舞伎の演目であり、通称「め組の喧嘩」として知られています。この作品の作者は竹柴其水で、全四幕、八場から成る構成となっています。歌舞伎のこの演目は、文化2年に芝神明社で実際に起きた「め組の喧嘩」事件をテーマにしており、実在の人物を登場させることでよりリアルな物語を描いています。これぞまさに典型的な明治時代の実録風世話物です。

あらすじ

序幕　品川島崎楼の場・八つ山下の場

物語は、品川にある料亭・島崎楼での出来事から始まります。ここで、力士の四ツ車大八とめ組の若者が小さなことから口論を繰り広げます。仲裁に入るのは、め組の頭辰五郎ですが、事態は収束しません。その後、力士側の武士が身分の違いを口にしたことから、辰五郎の怒りが頂点に達し、遺恨を残したまま、八つ山下で四ツ車を襲撃します。

二幕目　芝神明芝居前の場

次の場面では、芝の神明社境内で再び四ツ車と九竜山浪右衛門ら力士とめ組の若者との衝突が起きます。辰五郎は喧嘩の決着をつけようとしますが、芝居小屋の太夫元の懇願によって一時的に収まることになります。

三幕目　数奇屋河岸喜三郎内の場・浜松町辰五郎内の場

辰五郎は、喜三郎の元に訪れ、喧嘩を避けられないという覚悟を決めます。喜三郎は辰五郎に以前の財布を見せて、喧嘩が大事になる前に考えるよう助言します。辰五郎は仲間と相談し、別盃を取り交わしますが、彼の女房お仲が意気地がないため離縁を言い出し、彼は心中を語ります。ついに辰五郎は喧嘩の準備を整え、子どもと別れを告げて神明社に向かいます。

四幕目　神明町鳶勢揃いの場・角力木戸喧嘩の場

最後の幕では、神明社内で辰五郎率いる町火消しと力士たちとの壮絶な喧嘩が展開されます。しかし喜三郎が仲裁に入り、双方はお上に訴えることで事態は収束します。

初演時の配役

歌舞伎初演時の配役は、め組の辰五郎に五代目尾上菊五郎、四ツ車大八に四代目中村芝翫、九竜山浪右衛門と焚出し喜三郎に初代市川左團次が配されました。お仲には四代目澤村源之助、亀右衛門には四代目尾上松助が名を連ねました。

概説

この演目は、分かりやすい筋と江戸時代の鳶の者たちの生活が描かれており、世話物としての魅力が詰まった傑作です。特に三幕目は河竹黙阿弥の補作が加わり、優れた描写が際立っています。辰五郎の舞台は、こだわりのある菊五郎が関係者と情報を密にしながら作り上げたもので、最後の喧嘩の場面では迫力ある舞台設定や音楽が効果的でした。

さらに、初演時には喧嘩の乱闘がややずさんであり、出演者が負傷する事態も起こりましたが、そのため逆に評判が高まりました。

その後、辰五郎役は多くの著名な役者によって受け継がれ、特に十五世市村羽左衛門の辰五郎はその後の名演を印象づけます。江戸前の演技が評判となり、歌舞伎の世界におけるこの作品の重要性が高まっているのです。

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