神楽坂はん子

神楽坂はん子

昭和期を代表する芸者歌手、神楽坂はん子（かぐらざか はんこ）。本名は鈴木玉子といい、昭和6年（1931年）3月24日に東京都で生を受け、平成7年（1995年）6月10日に64歳で亡くなっています。

来歴

東京都内で料理店を営んでいた両親の反対を押し切る形で、16歳の若さで神楽坂の芸の道に入りました。芸者としての評判が作曲家の古賀政男や作詞家の西条八十の耳に届き、万城目正の紹介を経て対面する機会を得ます。得意の歌声を披露し、特に古賀政男は感銘を受けたといいます。さらに、『芸術家なんて大嫌い』と歯に衣着せぬ発言をするなど、その飾らない、さっぱりとした人柄も古賀の心をとらえ、コロムビアレコードへのスカウトへと繋がりました。

昭和27年（1952年）4月、古賀政男作曲による『こんな私じゃなかったに』で歌手デビュー。この曲はデビュー曲ながらヒットを記録したのに続き、同年9月には当時流行していた江利チエミの『テネシー・ワルツ』に対抗すべく制作されたとされる『ゲイシャ・ワルツ』が空前の大ヒットとなりました。これにより、神楽坂はん子は一躍スター歌手の仲間入りを果たします。その後も、『こんなベッピン見たことない』（昭和27年）、『見ないで頂戴お月様』（昭和28年）、『湯の町椿』（昭和29年）など、数々のヒット曲を世に送り出しました。NHK紅白歌合戦にも2年連続で出場するなど、その人気は絶頂期を迎えます。その人気は他レコード会社にも影響を与え、ビクターからは神楽坂浮子という芸者歌手が登場するほどでした。

しかし、昭和30年（1955年）、身許引受人の意向により、突如として芸能界から身を引くこととなります。公には結婚が引退理由として報じられましたが、13年間の歌手活動に一旦終止符が打たれました。

それから13年後の昭和43年（1968年）、突然の歌手復帰を果たすこととなります。この復帰に際しては、長年住み慣れた家から転居し、関係者に対して『今までの13年間の女の生活を燃やしてきました』と、強い決意を語ったと伝えられています。復帰後の所属レコード会社は当初日本クラウンでしたが、その後は古巣であるコロムビアレコードに戻り、かつてのヒット曲の再録音などを行いました。東京12チャンネル（現・テレビ東京）の『なつかしの歌声』をはじめとするテレビ番組にも多数出演し、『ゲイシャ・ワルツ』など、おなじみのヒット曲の数々を再び披露しました。

晩年

しかし、昭和50年代後半（1970年代後半）に入ると、再び表舞台から遠ざかるようになります。自身の事業の失敗なども重なり、事実上、歌手活動は終止符が打たれた形となりました。その後、再び人前に姿を見せることはなく、平成7年（1995年）6月10日、埼玉県川口市の武南病院にて、ひっそりとその生涯を終えました。死因は肝臓癌、享年64歳でした。一人暮らしだった自宅には、多くの焼酎瓶が残されていたと伝えられています。

神楽坂という地名を一躍全国に知らしめた功績は、神楽坂はん子のものといえるでしょう。彼女に憧れ、後に同じく芸者歌手として活躍した神楽坂浮子も、平成18年（2006年）に放送されたテレビ番組で同様の証言をしています。

代表曲

『こんな私じゃなかったに』（1952年）
『ゲイシャ・ワルツ』（1952年）
『だから今夜は酔わせてネ』（1952年）
『芸者ブルース』（1953年）
『見ないで頂戴お月様』（1953年）
『ゲイシャ・ルンバ』（1953年）
『こんなベッピン見たことない』（1953年）
『こんな美男子見たことない』（1954年）
『こんな奥様見たことない』（1954年）
『こんなアベック見たことない』（1954年）
『博多ワルツ』（1954年）
『湯の町椿』（1954年）
『雨の田原坂』

その他

ドラマ出演などの活動もありました。

素浪人 月影兵庫 第2シリーズ 第32話「お酒に刀が浮いていた」（1967年、NET） - 小唄の師匠・はん 役

関連リンク

* 日本映画データベース　神楽坂 はん子

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