神様のくれた赤ん坊

映画『神様のくれた赤ん坊』について

『神様のくれた赤ん坊』は、1979年に松竹が製作した日本の映画です。前田陽一が監督を務め、桃井かおりと渡瀬恒彦が主演しています。この作品は、1957年の松竹映画『集金旅行』のリメイクであり、主人公たちが西日本を舞台に繰り広げるロードムービーです。同時上映は、人気シリーズ『男はつらいよ』の24作目『男はつらいよ 寅次郎春の夢』でした。

あらすじ

物語は、東京で同棲生活を送る森崎小夜子（桃井かおり）と三浦晋作（渡瀬恒彦）の元に、見知らぬ女が赤ん坊の新一を連れてくるところから始まります。女は手紙を残し、そこには新一の父親候補として5人の男性の名前が記されていました。困惑した晋作は、新一の父親を探すため、小夜子と共に西日本への旅に出ます。小夜子は、自身のルーツを辿るという目的も抱えていました。

旅の道中、二人は尾道、別府、天草、長崎、唐津、北九州といった各地を訪れます。尾道では、小夜子が幼少期を過ごした場所を懐かしみ、母親との思い出を辿ります。別府では、父親候補の一人から養育費を受け取ることに成功しますが、他の候補者との出会いは一筋縄ではいきません。天草では、小夜子の母親の故郷を訪れ、母との思い出に涙します。そして、長崎では、母親が働いていた場所を知り、過去を知る人物と出会います。唐津では、幼少期に住んでいた町を確信し、懐かしさに胸を熱くします。最後に、北九州では父親候補がすでに亡くなっていたため、彼の妻に新一を引き取ってもらおうとします。

登場人物

森崎小夜子（演：桃井かおり）
駆け出しの女優で、東京で晋作と同棲していました。度胸があり、臨機応変な対応ができる一方で、女優の仕事ではミスが多く、スタッフによく怒られています。旅では、自身のルーツを探します。
三浦晋作（演：渡瀬恒彦）
漫画家を目指すエキストラで、小夜子の恋人です。いい加減で無責任な性格ですが、どこか憎めない一面もあります。旅では、父親候補たちから養育費をせびろうとします。
田中新一（演：鈴木伊織）
父親が誰か分からない男の子で、小学校低学年くらいです。晋作に預けられ、共に旅をします。口数が少なく大人しい性格ですが、時折、頑固な一面も見せます。

その他にも、尾道の人々、別府の人々、天草の人々、長崎の人々、北九州の人々など、個性豊かなキャラクターが登場し、物語を彩ります。

作品の評価

公開当時、『男はつらいよ 寅次郎春の夢』との同時上映でありながら、松竹系としては最大規模の全国221館で公開され、興行的にも成功を収めました。

批評家からは、子供を思う複雑な感情と、母親に捨てられた子供への哀れさが描かれている点が評価されました。また、渡瀬恒彦と桃井かおりの演技、特に桃井かおりの心情描写が、作品に深みを与えていると評されました。

作品の魅力

この映画の魅力は、何と言ってもロードムービーとしての面白さです。主人公たちが旅をする中で、様々な人々との出会い、美しい風景、そしてそれぞれの過去と向き合っていく姿が描かれています。笑いあり、涙あり、そして少し切ない物語は、観る人の心を温かく包み込みます。

また、桃井かおりと渡瀬恒彦のコミカルな演技は、観る人を飽きさせません。特に、桃井かおりは、この作品でブルーリボン賞主演女優賞を受賞しています。

備考

作品のタイトルは「赤ん坊」ですが、実際に登場するのは小学校低学年ほどの子供です。また、物語の中では、血液型による親子関係の可能性が語られますが、DNA鑑定のような専門的な検査は行われません。

晋作の旅の目的は、最初は父親探しでしたが、次第に養育費をせびるという恐喝目的へと変わっていきます。一方、小夜子は、自身のルーツを辿るという目的を貫きます。

この映画は、単なるコメディ映画ではなく、人間の感情の深さや、家族の絆について考えさせられる作品です。ぜひ一度、ご覧ください。

受賞歴

第22回ブルーリボン賞 主演女優賞：桃井かおり
* 第3回日本アカデミー賞 主演女優賞：桃井かおり

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