神津閃石

神津閃石：日本の鉱物学に刻まれた輝き

1969年、日本の岩手県田野畑鉱山で発見された神津閃石は、日本の鉱物学において重要な位置を占める新鉱物です。東北大学の南部松夫氏らによって発見され、東北大学の岩石学者・鉱物学者であった神津俶祐博士の功績を称えて命名されました。

化学組成と結晶構造

神津閃石の化学組成はNaNa2Mn4(Fe3+,Al)Si8O22(OH,F)2と表され、単斜晶系に属する角閃石の一種です。これは、エッケルマン閃石(NaNa2(Mg4Al)Si8O22(OH)2)のマグネシウムがマンガンに、アルミニウムが三価鉄に置換した構造を持つことを示しています。

名称変更と現状

2012年の角閃石グループの呼称改訂により、神津閃石の学名は「マンガノフェリエッケルマン閃石(Mangano-ferri-eckermannite)」に変更されました。しかし、日本の鉱物学界では、和名として「神津閃石」を用いることは問題ないとされています。

発見時の報告と現状の認識

発見時の報告では、神津閃石は赤黒い産状をしているとされていました。しかし、浜根大輔氏による研究によると、実際にはマンガンを含むマグネシオアルベソン閃石を主成分としたオレンジ色の結晶の中にのみ含まれることが明らかになっています。両者の組成は連続的であるため、外見上は区別が困難です。さらに、田野畑鉱山の赤黒い「神津閃石」からは、2023年にロシアの研究者によってマンガニエッケルマン閃石という新鉱物が報告されました。これらのことから、初期の報告と実際の鉱物特性には食い違いがあり、赤黒いタイプの標本が本当に神津閃石であるかについては疑問が残ります。結晶解析も進んでおらず、神津閃石に関する不明な点は多く残されています。ただし、神津閃石そのものの存在は確認されています。

今後の研究課題

神津閃石に関する研究は、発見から半世紀以上が経過した現在もなお、多くの謎に包まれています。特に、発見時の報告と実際の鉱物特性の差異、赤黒い標本の正体、そして結晶構造の詳細な解明などは、今後の研究において重要な課題と言えるでしょう。これらの謎を解き明かすことで、神津閃石の鉱物学的特性がより深く理解され、日本の鉱物学の発展に貢献するはずです。神津閃石は、その発見から現在に至るまで、多くの研究者によって研究され、新たな知見が得られ続けている、まさに鉱物学における魅力的な研究対象なのです。

まとめ

神津閃石は、日本の鉱物学の歴史において重要な発見であり、その存在は日本の地質学的特徴を理解する上で重要な役割を果たしています。しかしながら、未だ不明な点も多く残されており、今後の更なる研究が期待されます。その研究成果は、日本の鉱物学のみならず、国際的な鉱物学の発展にも貢献するものと期待されます。

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