神田橋 (日本橋川)

神田橋

神田橋（かんだばし）は、東京都千代田区を流れる日本橋川に架かる、日比谷通り（東京都道403号大手町湯島線）の一部を構成する橋です。この橋は、右岸側が大手町一丁目、左岸の上流側が神田錦町二丁目、下流側が内神田一丁目に位置しており、地域を分ける境界としての役割も果たしています。橋を渡ると、整然と高層ビルが立ち並ぶ大手町エリアから、趣のある中小規模のビルに様々な中小企業や個人商店が入居する神田エリアへと景観が大きく変化する点が特徴です。

歴史的背景

神田橋という名は、この付近にかつて鎮座していた神田明神に由来します。江戸時代の江戸城拡張に伴い、神田明神は現在の外神田へと遷座しました。神田明神の跡地には、江戸城の重要な門の一つであった神田御門が設けられ、さらに大老を務めた土井大炊頭利位の屋敷が置かれていました。寛永期（1624年～1644年）の地図には、土井大炊頭の屋敷にちなんで「大炊殿橋（おおいどのばし）」として記されていた記録があります。

この橋から上野広小路を経て寛永寺へと通じる道は、江戸幕府の歴代将軍が菩提寺である寛永寺へ参詣する際に通ったことから、「御成道（おなりみち）」と呼ばれ、特に重要な道として位置づけられていました。御成道の名称は現代にも受け継がれており、現在でも天皇皇后両陛下が車で北関東方面へ向かわれる際にこの道を通る際に用いられています。

近代に入ると、神田橋は大きな転換点を迎えます。1923年（大正12年）に発生した関東大震災により、当時の橋は残念ながら崩壊してしまいました。震災からの復興事業の一環として、1925年（大正14年）11月10日に鉄筋コンクリート構造のラーメン橋として新たに架け替えられました。その後、交通量の増加や老朽化に対応するため、現在の橋は1980年（昭和55年）に架け替えられたものです。

現在の神田橋は、シンプルな構造の単純鈑桁橋として設計されています。橋の欄干に見られる親柱は、日本の伝統的な石灯籠を思わせるデザインが採用されており、周囲の景観に調和しています。また、橋のたもとには、震災からの復興に尽力した人物である太田圓三（おおた えんぞう）の功績を讃える碑が設置されており、震災復興の歴史を今に伝えています。

橋の左岸上流側には、かつてバスケットボールコートなどを備えた神田橋公園がありましたが、近隣で進行中の常盤橋修復工事の資材運搬路として一時的に使用されるため、現在は閉鎖されています。

交通の要衝として

神田橋は、東京都心の主要な幹線道路である日比谷通り（東京都道403号大手町湯島線）を通しており、道路交通における重要な結節点となっています。地下には都営地下鉄三田線と東京メトロ千代田線のトンネルが通っており、都心の地下交通網も支えています。

神田橋の左岸側には「神田橋交差点」があり、ここでは日比谷通りと、西行き一方通行である東京都道402号錦町有楽町線が交差しています。また、橋の上空には首都高速都心環状線が通り、都市高速交通網の一部を構成しています。首都高速の神田橋出入口は、この橋と密接に関わっています。具体的には、都心環状線の内回り方面への入口および内回り方面からの出口、そして外回り方面への入口が神田橋に接続しています。ただし、外回り方面からの出口は、神田橋には直接接続せず、東京都道402号錦町有楽町線に直接降りる構造となっています。

周辺の橋

日本橋川において、神田橋のすぐ上流側に位置するのは錦橋（にしきばし）です。一方、神田橋のすぐ下流側には鎌倉橋（かまくらばし）が架かっており、これらの橋とともに日本橋川の景観を形作っています。

（参考文献：東京今昔研究会『東京今昔橋めぐり』ミリオン出版、2013年）

もう一度検索