神田紫

神田 紫（かんだ むらさき）は、1951年11月30日に兵庫県神戸市で生まれた日本の女性講談師です。桜美林短期大学を卒業しています。

講談師への転身

若い頃、神田紫氏は舞台の世界に憧れ、女優の道を志しました。文学座や、演出家の小沢昭一氏が主宰していた劇団芸能座などで演技の研鑽を積み、舞台女優として活動していました。しかし、やがて表現の場を講談へと移す決断をします。講談の世界へ入るにあたり、二代目神田山陽氏に弟子入りし、伝統話芸である講談の修行を積みました。

修行を重ねた後、神田紫氏は1989年8月に真打へと昇進を果たしました。これは講談師として一人前と認められた証です。真打昇進から間もない同年10月には、落語芸術協会に所属することとなり、活動の幅をさらに広げていきました。

独自のスタイルと多様な活動

講談師として独自の道を切り開いてきた神田紫氏の活動は多岐にわたります。特に、女流講談師として各地で行われた「パープルエクスタシー」シリーズは注目を集めました。これは単に講談を演じるだけでなく、自身のルーツである舞台女優としての経験を活かし、講談に一人芝居の要素を融合させた新感覚の公演でした。伝統的な講談の枠にとらわれない、新しい表現方法を追求した試みと言えます。

講談活動に力を入れる一方で、神田紫氏は女優としての活動も継続しました。舞台の世界で培った表現力は、講談における人物描写や情景描写にも深みを与え、彼女独自の芸風を確立する上で重要な要素となりました。講談と芝居、それぞれの表現形式を行き来しながら、多角的な視点で物語を紡ぎ出すことが、彼女の魅力の一つとなっています。

講談界での貢献と後進の育成

神田紫氏は、講談師としての実力に加え、講談界の発展にも貢献しました。2008年から2009年にかけては、日本講談協会の会長を務め、業界の運営や振興に尽力しました。女性講談師が講談協会の要職に就くことは、その存在感を示す上でも重要な出来事でした。

また、後進の育成にも力を入れており、弟子を育てています。現在、前座として神田紫天氏がいます。かつては神田あっぷる氏という弟子もいましたが、彼女は青森県出身であることにちなんで「あっぷる」という名が付けられていました。神田あっぷる氏は落語芸術協会にも所属していましたが、2018年頃に二ツ目の時に廃業しています。

その他の活動

講談や舞台以外にも、メディア出演の経験もあります。例えば、1990年4月11日放送のフジテレビの番組「一枚の写真」に出演しています。これは、彼女の人物像やキャリアの一端に光を当てる機会となりました。

このように、神田紫氏は舞台女優から講談師へと転身し、伝統話芸に新しい息吹を吹き込みながら、多様な活動を展開してきました。独自の芸風や講談界での要職経験など、そのキャリアは多くの講談師にとって刺激となり、日本の話芸文化に新たな可能性を示しています。

もう一度検索