神道系大学

神道系大学とは

神道系大学とは、日本の伝統文化や精神性の根幹をなす神道に関する教育および研究を専門的に行う高等教育機関を指します。現時点において、この分類に当てはまる四年制大学は、東京都渋谷区に位置する國學院大學と、三重県伊勢市に所在する皇學館大学の二校のみです。これらの大学は、全国の神社を包括する宗教法人である神社本庁によって、神職を養成するための主要な教育機関の一つとして認定されています。

神社で奉仕する神職や巫女といった神道に関わる職業に就くためには、これらの神道系大学が設置する専門学科で学び、卒業することが一般的な方法とされています。

宗教を基盤とする大学は、キリスト教系、新宗教系、仏教系、そして神道系に分類されることがありますが、神道系大学はその中でも数が最も少なく、2013年の調査では短期大学を含めてもわずか4校しか存在せず、日本の全大学における割合は0.35パーセントに過ぎないと報告されています。この極めて少ない数からも、神道系大学が日本の高等教育において独自の立ち位置を占めていることがわかります。

國學院大學

國學院大學の淵源は、1882年（明治15年）11月4日に、神職の育成と日本の古典研究を目的として創設された皇典講究所にあります。この機関の初代総裁を務めたのは有栖川宮幟仁親王です。1890年（明治23年）、皇典講究所の中に教育部門として國學院が開設され、1906年（明治39年）には私立國學院大學となりました。皇典講究所は、当時の内務省の委託を受けて神職の養成を担っていました。

1920年（大正9年）には、大学令によって旧制大学へと昇格。これは、帝国大学以外で最初に大学として認められた私立大学8校（慶應義塾、早稲田、明治、日本、中央、法政、國學院、同志社）の一つとなる画期的な出来事でした。

第二次世界大戦後、皇典講究所は解散し、現在の神社本庁に統合されることになりました。これに伴い、その教育事業を引き継ぐ形で財団法人國學院大學（後の学校法人國學院大學）が設立され、旧制國學院大學はこの法人によって運営される國學院大學として再出発しました。1948年（昭和23年）には文学部が設置され、当初はこの文学部内に神道学科が置かれていました。しかし、創立120周年を契機とする教育改革に基づき、2002年（平成14年）に学部が再編成・拡充され、現在の神道文化学部が誕生しました。神道文化学部では、神社本庁が定める神職資格（階位）を卒業と同時に取得するためのカリキュラムが提供されています。

國學院大學の建学の精神は、皇典講究所初代総裁であった有栖川宮幟仁親王から与えられた「告諭」にある「本ヲ立ツル」という言葉に集約されています。これは、学問の基礎や根本を重んじる姿勢を示しています。また、大学の教育目的は学則第1条に「神道精神に基づき人格を陶冶し、諸学の理論並びに応用を攻究教授し、有用な人材を育成すること」と定められており、國學院大學ではこの神道精神を「日本人としての主体性を保持した寛容性と謙虚さ」と定義しています。神道文化学部に限らず、神道に関する科目が全学部の必修科目とされている点も特徴的です。さらに、渋谷キャンパス内には、大学の精神的な象徴としての國學院大學神殿が設けられています。

皇學館大学

現在の皇學館大学は、1962年（昭和37年）に私立大学として再興された学府です。その源流は、1882年（明治15年）4月30日に、神宮祭主であった久邇宮朝彦親王の指示により、伊勢神宮の神官の子弟に国学を教授するために、伊勢の林崎文庫内に設立された神宮皇學館に求められます。1900年（明治33年）には、当時の総裁であった賀陽宮邦憲王から「令旨」が下され、この「令旨」は今日においても皇學館大学の建学の精神を具体的に表すものとして、その原点と位置づけられています。

1940年（昭和15年）4月23日には、勅令「神宮皇學館大學官制」が公布され、神宮皇學館はそれまでの内務省管轄の官立専門学校から、大学令に基づく文部省管轄の官立大学へと昇格しました。皇學館大学では、この官立大学であった時期を「国立大学時代」と呼称しています。

しかし、1945年（昭和20年）の太平洋戦争終結と日本の敗戦により、同年12月15日、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）から「神道指令」が出されました。この指令により、国公立学校における神道教育や関連研究が禁止され、神宮皇學館大學は1946年（昭和21年）3月31日をもって廃学を余儀なくされました。

戦後、神宮皇學館の持つ精神と伝統を継承しようとする動きが高まり、1962年（昭和37年）に私立大学として皇學館大学が再興されることとなりました。現在は、文学部、教育学部、現代日本社会学部の三学部体制をとっており、このうち文学部に設置されている神道学科および神道学専攻科が、國學院大學と同様に神社本庁の神職養成の重要な役割を担っています。皇學館大学の教育目的は、学則第1条に「わが国民族の歴史と伝統とに基づく文化を究明し、洋の東西に通ずる道義の確立を図り、祖国愛の精神を教育培養するとともに、社会有為の人材を育成すること」と明記されており、日本の伝統文化の探求と、国際的視野を持ちつつ祖国を愛する人材の育成を目指しています。キャンパス内に神殿は設置されていませんが、その創立の経緯から、現在も伊勢神宮との繋がりが非常に強いことが特徴です。

その他の関連機関

神道に関連する教育機関としては、四年制大学以外に短期大学も存在します。学校法人國學院大學が運営する國學院大學北海道短期大学部（北海道滝川市）や、学校法人國學院大學栃木学園が運営する國學院大學栃木短期大学（栃木県栃木市）があり、これらも神道に関する基礎的な教育や関連分野の学びを提供しています。

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