神野三郎

神野三郎

神野 三郎（かみの さぶろう）は、1875年（明治8年）5月28日に生まれ、1961年（昭和36年）4月30日に亡くなった実業家です。現在の愛知県清須市にあたる西春日井郡清洲村の旧家出身で、養父である初代神野金之助のもとで広大な神野新田の開発責任者として手腕を発揮し、その完成と発展に尽くしました。また、1943年（昭和18年）に設立された中部瓦斯の初代社長を務めるなど、ガス事業をはじめとする地域の基盤産業育成にも大きく貢献し、後に豊橋市名誉市民に選ばれています。出生時の名前は竹田 三郎でした。

生い立ちと学生時代

竹田三郎として、尾張清洲に代々続く竹田家に生まれました。父は愛知県第三区長などを務めた竹田晨正、母は神野家出身のゑいです。三郎は5男4女の三男として育ちました。母ゑいの兄弟には、後に三郎の養父となる初代神野金之助がいました。

三郎は母方の祖父である神野金平から早くからその才能を見抜かれ、1883年（明治16年）11月20日には神野金平の養子となりました。これにより清洲村から海西郡江西村へ戸籍を移し、同時に将来の義父となる叔父、初代神野金之助の義弟という立場になりました。

名古屋の学校で学び、1893年（明治26年）に卒業しました。学業成績は優秀で、卒業後はアメリカ留学を志していました。

神野新田開発とその経営

アメリカ留学を希望していた三郎でしたが、1893年（明治26年）に養父・初代神野金之助が神野新田の開拓事業に着手すると、その現地責任者に抜擢されました。彼は豊橋市牟呂町に転居し、卒業からわずか数ヶ月後の同年6月には既に工事に従事していました。

神野新田は1896年（明治29年）4月15日に完成し、盛大な完工式が執り行われました。また、1899年（明治32年）3月には牟呂用水の改築工事も完了し、新田の基盤が整いました。

1899年（明治32年）7月26日、三郎は初代神野金之助の三女でいとこにあたる神野りきと結婚し、1905年（明治38年）3月17日には神野家の分家として豊橋における初代当主となりました。

新田経営においては、1906年（明治39年）に農事試験場を設け、農作物の研究と小作農家への農業指導に力を入れました。緑肥や厩肥などを活用した土壌改良を進め、新田の収穫量は着実に増加しました。模範的な新田として評価され、多くの著名人が視察に訪れています。

神野新田以外にも、地域の様々な企業設立や経営に関与しました（例：豊橋蚕糸周旋会社、豊橋電気軌道株式会社など）。

ガス事業への貢献と社会活動

三郎はガス事業にも深く関わりました。1909年（明治42年）設立の豊橋瓦斯、翌年設立の浜松瓦斯で常務取締役を務め、1922年（大正11年）には浜松瓦斯の社長に就任し、1943年（昭和18年）まで長期にわたりその任にあたりました。岡崎瓦斯の社長も兼任した時期があります。

地域の経済界においても主導的な役割を果たしました。1925年（大正14年）には豊橋商工会議所の副会頭に就任し、三信鉄道株式会社の設立に尽力。1930年（昭和5年）からは1936年（昭和11年）まで会頭を務めました。

1943年（昭和18年）9月1日、豊橋瓦斯と浜松瓦斯が合併し中部瓦斯が誕生すると、三郎はその初代社長に就任します。翌年には会長となり、社長職は息子の神野太郎に引き継がれました。太平洋戦争後の農地改革が始まると、1946年（昭和21年）2月には神野新田の開放を表明し、同年5月には調印を行いました。

晩年と顕彰

1959年（昭和34年）11月3日、長年の地域社会への貢献が認められ、豊橋市名誉市民に推挙されました。1961年（昭和36年）4月30日、85歳で死去しました。

現在、豊橋市神野新田町にある神富神社の境内には、彼の功績を讃える「神野三郎翁頌徳碑」が建立されています。また、神野三郎を主題とする演劇公演が計画されるなど、その業績は後世に語り継がれています。

家族

• - 実父：竹田晨正
• - 実母：竹田ゑい（神野家出身）
• - 養父：初代神野金之助
• - 妻：神野りき
• - 子：神野太郎、神野義郎、神野紀郎、神野三男など

彼の築いた基盤は子孫に引き継がれ、地域経済の発展に貢献しています。

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