神野町 (加古川市)

神野町（かんのちょう）

兵庫県南部に位置する加古川市の一角を占めるのが神野町です。この地域は、かつて加古郡に属する神野村という独立した自治体でした。本項では、現在の加古川市神野町の様相に加え、その前身である神野村についても触れます。

歴史と変遷

神野村の歴史は、近代の町村制施行に始まります。明治22年（1889年）4月1日、近隣にあった加古郡の神野村、西ノ山村、石守村、福留村、下西条の五つの村が合併し、新たな「神野村」として発足しました。村役場などが置かれ、この地域における行政の中心としての役割を担うことになります。

しかし、その歴史は50年余りで転機を迎えます。昭和25年（1950年）6月15日、神野村は、当時の加古郡加古川町、尾上村、野口村、平岡村と共に合併し、新たに「加古川市」が誕生しました。これにより、神野村は地方自治体としての存在を終え、加古川市の一部として組み込まれることになったのです。

市への編入後も、神野町域内では時代の変化に応じた地域再編が進められました。昭和43年（1968年）3月20日には新神野地区が新設され、その後も昭和48年（1973年）11月9日に神野町日岡苑が、昭和49年（1974年）11月1日には再び新神野および西条山手地区が新たに設けられました。さらに、昭和58年（1983年）11月21日には山手地区が、平成17年（2005年）10月26日には神野町石守と神野町福留がそれぞれ新設されるなど、宅地開発や人口増加に伴う町域の細分化が行われています。

現在の地理と構成

現在の加古川市神野町に相当する区域は、石守、神野、西条、西之山、日岡苑、福留といった古くからの地域に加え、山手、新神野、西条山手など、近年に成立した住宅地を含む広がりを持っています。町域の中央部を流れる曇川は、やがて市内を南北に貫く加古川へと合流しており、地域の自然環境に影響を与えています。

交通網

神野町は交通の便も比較的恵まれています。鉄道については、JR加古川線が町域を通り、地域住民の通勤・通学を支える神野駅が設置されています。バス路線としては、神姫バスが運行しており、市内各方面へのアクセスを提供しています。道路網においては、兵庫県道18号（加古川小野線）、兵庫県道148号（大久保稲美加古川線）、兵庫県道383号（八幡別府線）、兵庫県道384号（平荘大久保線）といった主要な県道が縦横に走り、地域内外を結んでいます。また、広域交通を担う東播磨南北道路が町域を通過しており、神野ランプや県立加古川医療センターランプが設置され、自動車による移動の利便性が高められています。

生活を支える施設

神野町には、住民の教育や健康、生活を支える様々な施設が立地しています。教育機関としては、加古川市立やまて幼稚園、加古川市立陵北小学校、加古川市立神野小学校、そして加古川市立山手中学校があり、地域の子どもたちが学んでいます。医療機関としては、高度・専門医療を提供する兵庫県立加古川医療センターや、旧国立加古川病院を前身とする甲南加古川病院といった大規模な病院があり、近隣地域を含めた医療拠点となっています。郵便サービスについては、加古川西条山手郵便局、加古川神野郵便局、加古川新神野郵便局が設置され、地域住民の郵便・貯金・保険などのニーズに対応しています。

歴史を物語る史跡

神野町域には、この地の長い歴史を物語る貴重な史跡が点在しています。特に、古代の仏教文化を伝える西条廃寺跡や、多数の古墳が集中する西条古墳群は特筆されます。西条古墳群には、行者塚古墳、尼塚古墳、人塚古墳といった円墳や前方後円墳などが含まれており、古代播磨における有力者の存在や、当時の埋葬文化を知る上で重要な手がかりを提供しています。

神野町は、かつての村の歴史を引き継ぎつつ、都市化の進展と共に発展を続けている地域です。豊かな自然環境と古代からの歴史遺産、そして現代的な生活基盤が融合し、多くの人々が暮らしています。

参考

加古川市『加古川市史記述編』 3巻（近・現代編）