神龍 (航空機)

神龍（じんりゅう）

神龍とは、大日本帝国海軍が太平洋戦争中に試作した特攻機であり、強烈な攻撃力を持つ火薬ロケット推進による兵器です。特に、戦車や上陸用舟艇などの攻撃を目指して設計され、状況が悪化する戦局の中で開発されました。この機体は、独自の設計思想が色濃く反映されており、作戦目的に特化した形状と機能を持っています。

特徴

神龍は、主に火薬ロケットを動力源とし、離陸時と攻撃突入時にパワーを発揮する構造になっています。機体内部には、100 kgの徹甲爆弾が装備されており、攻撃時には特定の高度に達した後に爆弾の安全ピンが解除され、目標を発見すると中央のロケットが点火されます。これにより体当たりを行う仕組みです。

この特攻機は、全体が木製の骨組みでつくられ、量産を意識した設計がなされています。操縦は開放式のコックピットから行い、降着装置には3本の橇（スキッド）が使用されています。主翼は高翼単葉形状で、優れた空力特性を意図していますが、実際の飛行特性は望ましいものではありませんでした。

また、神龍の開発にあたっては、最初に想定されたのは山岳地帯の洞窟からの発進でしたが、最終的には陸上のトラックで輸送される形で運用されることに変更されました。攻撃対象としては、特にアメリカ軍のM4中戦車や新型重戦車であるM1重戦車が警戒され、これらに対して効果的な攻撃が期待されていました。

しかし、試験飛行を行ったパイロットからは操縦の難しさに対する懸念が出されており、神龍の特攻には向かないとの指摘もありました。さらに、パイロットたちは「僅か5、6人を巻き込むだけの作戦が、本当に国家のためになるのか疑問」といった意見を後に残しています。このような背景から、神龍にはさらなる改良の提案も行われましたが、実戦投入の機会を得ることはありませんでした。

歴史

神龍の開発は、1944年に逓信省航空局航空試験所によって始まりました。設計がなされた後、海軍艦政本部から提示された必要条件に基づいて進められ、最初の試作機が1945年に完成しました。だが、当初の設計が単純すぎることから改良が必要とされ、新たな班が設計を担当しました。

この新型は飛行試験中、異常振動が見られたため更なる調整が行われ、最終的には無人での飛行試験に進みました。しかし、このテストではエンジン停止後に墜落事故を起こしています。神龍の量産計画は進みましたが、終戦の影響により実戦には至りませんでした。最終的には試作機として5機のみが完成し、その後の戦局の変化とともに姿を消しました。

今日では、神龍の実機は存在しませんが、訓練を受けたパイロットの友人が個人的に製作したレプリカが香川県さぬき市の羽立峠に展示されています。これは当時の技術と戦争の悲惨さを伝える貴重な資料となっています。

諸元

• - 全長: 7.6 m
• - 全幅: 7.0 m
• - 全高: 1.8 m
• - 自重: 220 kg（ロケットエンジン非搭載時）
• - 最大離陸重量: 600 kg（ロケットエンジン非搭載時）
• - エンジン: 固体燃料ロケットエンジン × 3（合計推力：400 kg）
• - 最大速度: 300 km/h
• - 巡航速度: 110 km/h
• - 上昇限度: 400 m
• - 航続距離: 4 km
• - 武装: 100 kg爆弾 × 1（内蔵）
• - 乗員: 1名

神龍は独特な技術的背景と時代背景の中で誕生した特攻機であり、その設計や運用方法、戦局における位置づけなどが今日でも研究の対象となっています。

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