祭車

祭車（さいしゃ）について

祭車（さいしゃ）は、三重県桑名市を中心とした伊勢湾北部の地域で採用される山車で、石取祭の重要な要素となっています。この祭車は三輪形式を採用し、前輪が一つ、後輪が二つの構造を持っています。上部には四本の柱で支えられた枠台が設置され、その前方には階段が取り付けられています。枠台の上には様々な装飾が施され、多くの場合は提燈や人形が立てられています。また、枠台の後方には鉦や太鼓などの楽器が配置され、その楽器を保護するための天幕も設けられています。

特異性

祭車の最も顕著な特徴は、他の祭りの山車とは異なる独特な形態を持っている点です。この祭車は、後部側面に4〜6丁の鉦を吊るし、さらに後部正面には二尺三寸から三尺の大きさの太鼓が設置されています。各町内ごとに異なる拍子で演奏しながら練り歩くスタイルは、祭車が演奏者のための台車として機能することを示しています。このため、祭りでは主役と脇役の構図が非常にユニークで、太鼓の叩き手が中心となり、その他の参加者はそれを彩る役割を果たすのです。また、石取祭は主に夜間に行われるため、祭車の装飾は暗い場所で映えることを考えられています。

小型山車

祭車は近隣の祭りと比較すると、最高サイズが九尺弱と比較的小さな存在です。この小型化は、後部に吊るされた太鼓を人が立って叩く設計が影響しているほか、歴史的な背景も影響を与えています。戦前は道路幅が狭かったこともあり、祭車の大型化が難しい状況にありました。

階段の設置

祭車の正面には、神様が昇るための階段があり、注連縄が張られています。この階段は当初は昇降のためのものではありましたが、現在では信仰のシンボルとしての役割が強いです。戦後に再建された祭車では内部に昇降手段が設けられていますが、当初の小型祭車ではこの階段が唯一のアクセス手段だったのです。

三輪山車

祭車は特有の三輪形式を持ち、その轅（ながし）は「鬼木」または「男荷木」と呼ばれています。江戸時代には主に四輪の形態が一般的でしたが、祭の移動を容易にするために三輪に変更された経緯があります。祭車の運行は通常、雇われた人足によって行われ、技術的な要素は少ないです。最近では、前の車輪に補助輪を付ける町も見受けられます。

山形十二張の提燈

祭車の上部には提燈が装飾され、江戸時代中期以降、山形十二張の形状が一般的になりました。かつての一本柱は、1909年に電線が張られたことにより、折り曲げられた形に変化しています。造り物には、戦前から続く伝統を持つ町もあれば、戦後に新たに作られた町も存在しています。

勾欄の特徴

祭車の勾欄は非常に大きく、通常の祭車よりも目立つ存在です。これは他の祭りとは異なり、操作性を重視した構造であるため、石取祭ならではのデザインと言えるでしょう。

天幕と夜間照明

祭車には楽器や人を保護するための天幕があり、現在ではそのデザインが豪華になっています。夜間の装飾では通常の提燈の他にも蝋燭が祭車の周りに設置され、昼間の装飾とも変わらないスタイルが保たれています。最近では電球の使用が一般的になりつつありますが、伝統的なホンモノの蝋燭も多くの町で愛用されています。

石取祭の祭車は、歴史的背景や地域文化を反映したユニークな存在であり、今もなお地域の人々に親しまれています。

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