禁忌 (医学)

医療における禁忌についての理解

医療における禁忌とは、特定の医療行為が患者にとって有害であるために行うべきでない理由や状況のことを指します。この概念は、適応（行うべき治療）という考え方の対義語として位置づけられており、安全な医療を実施するためには非常に重要な要素です。

禁忌の種類

禁忌は大きく分けて、絶対禁忌と相対禁忌の2種類があります。これらはそれぞれ異なる状況を示し、患者の安全性を確保するための指針となります。

絶対禁忌

絶対禁忌は、特定の医療行為に対して決して行うべきでない状況を指します。この状態では、合理的な理由が存在せず、禁止が覆ることはありません。具体的な例としては、以下のようなケースがあります。

• - 小児や10代のウイルス感染症患者には、ライ症候群のリスクがあるためアスピリンの投与は避けるべきです。
• - 食物アレルギーを持っている人は、アナフィラキシーを引き起こす食品を絶対に摂取してはなりません。
• - ヘモクロマトーシスの患者には、鉄剤は投与しないべきです。
• - 妊婦に対しては、サリドマイドやイソトレチノインといった催奇形性のある薬剤を投与することが禁忌とされています。

このように、絶対禁忌はその状況では絶対に医療行為を実施してはいけない状態を示しています。

相対禁忌

相対禁忌は、治療に伴う合併症のリスクが高いものの、他の要因や手段によってそのリスクを軽減できる可能性がある場合を指します。例えば、妊娠中の患者は通常、X線撮影を避けるべきとされています。しかし、結核などの重篤な疾患の診断と治療が必要とされる場合、X線拍撮によるリスクを上回る有益性があるため、状況によっては実施されることがあります。

このように、相対禁忌はリスクと利益を天秤にかける必要がある状態であり、状況に応じた判断が求められます。

用語の違い

また、禁忌に関連する用語には注意（precautions）や警告（cautions）があります。これらは相対禁忌を示すために使用されることが多く、禁忌と同義で扱われることがあります。国によって使用する用語が異なるため、医療従事者はこれらの用語の使い方に注意を払う必要があります。

たとえば、イギリスの国家医薬品集では「警告と禁忌」という表現が用いられています。一方、アメリカでは「注意と禁忌」といった表現が使われることが多いです。

本記事では、医療における禁忌についてその定義や具体例、関連用語の違いを解説しました。医療行為の実施にあたっては、これらの禁忌を理解し、患者の安全を最優先に考えることが重要です。

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