禁色 (小説)

禁色（きんじき）

概要

『禁色』は、日本を代表する作家三島由紀夫による長編小説です。彼の6作目の本作は、特に男色に関する内容が特徴的で、若い頃からの苦悩や葛藤を凝縮した作品として位置づけられます。物語は、裏切られ続けた老作家と同性愛者の青年が織りなす心理的な復讐劇であり、性や芸術についての深い洞察が込められています。

あらすじ

物語は1950年の夏から翌年の秋にかけて展開します。主な人物は檜俊輔という老作家です。彼はすでに著名な作家としての地位を確立し、しかし何度も女性に裏切られてきた過去を持つ男です。俊輔は新たに現れた美青年・南悠一を通じて、自身の復讐を企てます。

悠一は、俊輔がかつて惹かれた女性・康子の許婚であり、彼の同性愛者としての立場を利用して俊輔は計画を進めます。俊輔は悠一に対して女性たちを翻弄させるよう指示を出し、長年の恨みを晴らそうとしますが、次第に悠一自身が女性に向き合い、自らの意志で生きていこうとする過程が描かれます。

物語の中で、悠一は俊輔に導かれ、女性たちを操る人形のように扱われながらも、同性愛における関係や友情、愛を模索します。特に、元伯爵夫人との関係においては、女性としての内面的な葛藤も描かれ、この部分は物語の中心的なテーマとなっています。

登場人物

• - 檜俊輔: 66歳の老作家で、過去に裏切られた女性への復讐を試みる。
• - 南悠一: 22歳から23歳の絶世の美青年で、同性愛者であり、俊輔の復讐の道具として使われる。
• - 南康子: 悠一の許婚であり、俊輔の復讐の対象。
• - 鏑木信孝元伯爵: 俊輔の復讐によって翻弄される同性愛者。

創作背景

三島由紀夫は本作を「20代の総決算」として執筆し、自己の内面的な対立を小説という形で表現しました。また、作中に登場するゲイバー「ルドン」のモデルは実在の場所であり、三島自身が体験したことを反映した要素が多く含まれています。

作品の影響

『禁色』は発売当初から大きな反響を呼び、三島由紀夫の作家としての地位を不動のものにしました。同性愛を堂々と描いている点が特に注目され、その後の文学における性の解放にも寄与したとされています。さまざまな文学的要素を含んだ本作は、古典的な私小説の枠を越えて、現代文学の重要な一部となっています。

評価

三島の作品は、しばしばその挑発的なテーマや言葉の力強さから評価されますが、『禁色』においても例外ではありません。多くの批評家や作家がその構造や深い内容に驚嘆し、いくつかの研究や解説が行われています。また、作品の数々の翻訳版も存在し、外国でもその名は知られています。

まとめ

『禁色』は三島由紀夫の代表作の一つであり、同性愛と復讐を通して描かれる人間の複雑な心理を扱っています。彼の特異な視点と文学的な技法が光る本作は、今もなお多くの読者に影響を与え続けています。

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