禁酒運動

禁酒運動とは

禁酒運動は、共同体や社会全体でアルコールの消費を減少させる、または完全に禁じることを目指す活動です。この運動の背景には、政治的な理由や宗教的な信念があり、多様な動機が存在しています。政治的な意図には、アルコールの健康への影響を軽減し、社会や家庭の崩壊を防ぐためのものが多いです。また、アルコールによって引き起こされるさまざまな社会問題に対する解決策として禁酒が提案されています。

欧米における禁酒運動

19世紀末から20世紀前半にかけて、欧米では禁酒運動が盛んになりました。ヨーロッパ諸国では、1829年にアイルランドで初めて禁酒運動団体が形成され、続いてスカンジナビアやスコットランド、イングランドなどでも活動が広がりました。

特にイギリスでは、1835年に設立された「全国絶対禁酒教会」が重要な役割を果たしました。プロテスタント教会は集会を開催し、アルコールの代わりに紅茶を推奨しました。その影響で紅茶の消費が拡大しました。また、19世紀後半にはスイス、ドイツ、フランス、ロシアでも禁酒団体が設立され、キリスト教の教職者が中心となって活動を進めました。

アメリカでも1733年にペンシルベニア植民地でショーニー族が初めて禁酒運動を展開し、寄付を求めてラム酒の持ち込みを禁じることに成功しました。1869年には禁酒党が設立され、選挙で20万票を集めることもありました。さらに、1873年に発足したキリスト教婦人矯風会は、禁酒活動を全国に広める上で大きな影響を持ちました。

ロシアの禁酒運動

ウォッカが主流のロシアでも禁酒運動がありました。特に1980年代、ソビエト連邦の指導者ユーリ・アンドロポフやミハイル・ゴルバチョフが禁酒政策を推進しました。ゴルバチョフは「しらふが正常」とのスローガンを掲げたものの、結果的にはウォッカの密造を助長し、税収の減少を引き起こしました。ロシアにおける禁酒運動は完全な禁酒ではなく、適度な飲酒を促進するものでした。

日本の禁酒運動

日本では1873年に横浜で外国船員禁酒会が設立されたのを皮切りに、1886年には東京婦人矯風会が結成され、広範な禁酒運動が始まりました。日本キリスト教婦人矯風会が全国的な組織として活動を開始し、禁酒の理念を広めていきました。さらに、戦後には日本禁酒同盟として改名されて現在に至っています。

公衆衛生と立法

19世紀末からは公衆衛生に基づいてアルコール中毒の防止を訴える運動が出現しました。20世紀初頭には、優生学の観点からの禁酒運動も見られ、ナチスによる優生学や民族衛生運動に影響を与えることになります。

禁酒令は20世紀前半に各国で導入され、特にアメリカ合衆国における1920年代の禁酒法は有名です。この法律は憲法修正第18条とボルステッド法に基づき、国内でのアルコール製品の生産や販売が禁止されました。禁酒運動は、さまざまな社会問題への取り組みの一環でもあったのです。

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