福井利吉郎

福井 利吉郎（ふくい りきちろう）の生涯と業績

福井利吉郎（1886年3月10日 - 1972年12月1日）は、明治から昭和にかけて日本の文化財保護と美術研究に大きく貢献した文学者であり、美術史家です。彼は生涯を通じて50年以上にわたり、文化財の調査、指定、保存に尽力しました。特に、彼の専門領域である仏教美術や、尾形光琳、俵屋宗達、乾山といった著名な画家に関する研究は、多岐にわたります。さらに、絵巻物や水墨画の分野でもその成果を残しました。

経歴と教育背景

福井は岡山県児島郡に生まれ、岡久一郎の次男として育ちました。彼の教育は、1904年に福井彦次郎の養子となった後、大阪に転居したことから始まります。天王寺中学を経て、第一高等学校を卒業後、1910年には京都帝国大学文科大学哲学科を卒業しました。在学中には副手としても活動し、学問に対する真摯な姿勢を養いました。

1911年には、平子鐸嶺の後を受けて内務省古社寺保存計画の調査嘱託を務め、この立場で多くの文化財を調査しました。これにより、彼は文化財保存の第一人者として名を馳せることになります。

文化財保護と専門分野

福井は、1945年に勲二等瑞宝章を受章し、その功績が広く認められました。文化財の保護に関する審議にも関与し、1968年には文化財保護審議会の専門委員を退任しましたが、それまでに多くの文化財の保存に寄与しました。彼の研究テーマは幅広く、特に仏教美術の研究が評価されました。具体的な著作としては、1932-33年に出版された『繪巻物概説　岩波講座日本文學』や、1933年に発表された『水墨画　岩波講座日本文學』があります。

主な著作と遺産

さらに、ジョージ・サンソムとの共著による『日本文化史』や、自身の研究成果を集めた『福井利吉郎美術史論集』もあり、これらの出版物は日本の美術史における重要な文献として位置づけられています。また、福井は岡倉覚三という同時代の文化人とも親交を深めており、古社寺保存会の委員として活動しました。彼の影響は、後の世代に受け継がれており、日本の美術及び文化財の保護活動に大きな影響を与えています。

晩年と死

福井利吉郎は1972年、脳内出血により東京都三鷹市の自宅で逝去しました。彼の墓は染井霊園にあります。彼の生涯は、日本の美術史や文化財保護に対する情熱と貢献の証として、今も多くの人々に敬意を表されています。彼が築き上げた業績は後世にわたり、大切にされ続けることでしょう。

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