福井県立坂井農業高等学校

福井県坂井市坂井町宮領にかつて存在した福井県立坂井農業高等学校（ふくいけんりつさかいのうぎょうこうとうがっこう）は、地域における農業教育の中心を担ってきた公立高等学校です。

沿革

その歴史は、1917年（大正6年）12月に文部大臣の設立認可を得て、「坂井郡立農学校」として開校したことに始まります。1923年（大正12年）4月には郡制廃止に伴い福井県に移管され、「福井県立坂井農学校」と名称を変更しました。その後も教育内容の拡充が進められ、1942年（昭和17年）4月には女子部が新設され、1947年（昭和22年）4月には畜産科が設置されました。

戦後の学制改革を経て、1948年（昭和23年）4月には福井県立丸岡高等学校が総合制高校として設立され、坂井農学校は同校の農業課程を担う西校舎となりました。しかし、1953年（昭和28年）4月には農業課程が再び独立し、「福井県坂井農業高等学校」として新たな歩みを始め、1957年（昭和32年）3月には「福井県立坂井農業高等学校」と改称されました。

独立後も教育環境の整備は精力的に行われました。1960年代には畜産関連施設や実習室が相次いで完成し、1969年（昭和44年）11月には校舎が落成しました。その後も、グラウンド造成、山室農場での施設整備、食品加工実習棟、第2体育館、生物工学関係実習施設、環境制御温室、宿泊研修施設「白峰会館」など、多岐にわたる施設整備が進められ、生徒たちの学びを支えました。また、1991年（平成3年）にはCAI実習室が設置されるなど、新しい技術の導入も積極的に行われました。

教育内容

閉校時には、時代の変化に対応した多様な学科が設置されていました。

生産技術科: 2年次から農業、園芸、教養の3コースに分かれ、作物の栽培技術や経営、生物活用など、幅広い農業分野を深く学ぶことができました。
食品科: 2年次から加工、流通、教養の3コースに分かれ、食品製造の技術、品質管理、食品の流通・販売について専門的に学びました。
* 環境システム科: 2年次から建設システム、環境デザイン、教養の3コースに分かれ、農業土木、造園、環境保全に関する知識と技術を習得しました。

これらの学科改編も時代の要請に応じて行われ、1992年（平成4年）には生物生産科、食品科学科、農業工学科、生活経済科の4学科体制となり、1997年（平成9年）には現在の3学科体制となりました。農業実践室（ミニスーパー）の設置など、実践的な学びの場も提供されていました。

山室農場

学校から離れた場所にある山室農場は、広大な敷地を利用した農業実習の重要な拠点でした。1925年（大正14年）4月に設置され、梨、ぶどう、栗、さつまいもといった果樹や野菜の栽培、さらには鶏肉やハムなどの加工品の生産も行われ、生徒たちの実習や地域との連携に活用されていました。

部活動

運動部、文化部ともに活発な活動が行われていました。運動部では野球、サッカー、バスケットボール、自転車、テニスなど多くの種目があり、文化部では吹奏楽、茶道、放送、美術、書道といった一般的な部活動に加え、自動車、測量、技術、機械研究、農業研究など、専門学科の学びと関連する部活動も設けられており、生徒たちは文武両道を目指して励んでいました。

閉校

福井県立高校再編計画に基づき、坂井農業高等学校は2014年（平成26年）4月に春江工業高等学校と統合され、さらに金津高等学校の経理科・情報処理科、三国高等学校の家政科も合流する形で、新たに総合産業高等学校である福井県立坂井高等学校が開校しました。

これに伴い、坂井農業高等学校としての歴史は終焉を迎え、2016年（平成28年）3月4日には最後の卒業式と閉校式が厳かに執り行われました。そして、2016年（平成28年）3月31日をもって、100年近い長きにわたる歴史に幕を閉じました。

多くの卒業生が社会で活躍しており、メガネトップ創業者である冨澤昌三氏もその一人です。学校の敷地は福井県立坂井高等学校に引き継がれ、農業教育の精神は新たな形で継承されています。最寄り駅はJR北陸本線丸岡駅で、徒歩約3分と比較的アクセスが良い場所に位置していました。

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